記者と広報は、なぜすれ違う?第一線で活躍するメディアの記者に本音で語ってもらいました。
大手テレビ局の制作会社 AD Yさん(男性)幼いころからテレビを見るのが大好きで、民放キー局の番組制作会社に入社。テレビ番組の演出補助を担当している。テレビ局の裏側は、思った以上に過酷で耐え難いものだが、その分、やりがいも喜びもひとしお。 |
私は、とあるテレビ局のバラエティ番組を中心に、多くの番組の制作を担当してきた。企業の広報担当者とは、依頼から放送までの一連のやりとりをさせていただくことが多い。その際に手こずるのは、制作側の「メディア」としての立場を理解してくれず、信頼もしてくれない広報担当者。中でも、かなり困った例をご紹介したい。
ロケ中の過度な口出しは迷惑
2時間特番の企画で、大手外食チェーンを取材したときのこと。内容は、タレントが出演するものではなく、店内に定点カメラを設置させていただき、客の注文の様子を観察するものだった。
この企業の広報担当を務める女性とのやりとりは、ロケの2週間ほど前に始まった。行列のできる人気店であるこの店への取材が決まると、私はディレクターとともに打ち合わせに向かった。
撮影依頼をしたのは、午前8時~午後10時半の14時間半にわたる定点観察と、店や商品の撮影。VTR中にどんな見どころが盛り込めるのかを確認し、どのような演出ができるのかを話し合った。広報の女性は積極的に意見を出してくれたほか、ロゴやメニューなどの細かなデータの提供依頼に迅速に対応していただき、とても好印象だった。
そしてロケ当日。私は、本番の2時間前には現場に着き、技術スタッフやアシスタントプロデューサーと協力して定点カメラのセッティングなど、ロケのスタンバイをしていた。その際、この女性も立ち会ってくれたのだが、ことあるごとに「カメラをもっとこっちに配置した方がいいのでは」などと指摘が入り、そのおせっかいぶりに制作スタッフも参ってしまった。
物撮りや店の全景の撮影の際も「箸上げは必要ですか?」といった協力的な姿勢は嬉しかったのだが、ディレクターやチーフカメラマンに対しても「照明はこの角度の方が見栄えが良い」「この角度から撮ると店が綺麗に撮れる」などと言い出す始末。SNS映えする写真を撮る女子高生のようなこだわりぶりで、現場は不穏な空気が漂っていた。スタッフのそのイライラは、帰社後に窓口を担っていた私にぶつけられたのだが…