日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

ウェブリスク24時

SNS活用の間違った目標設定

鶴野充茂(社会情報大学院大学 客員教授/ビーンスター 代表取締役)

ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。

イラスト/たむらかずみ

静岡県が開設したTwitter公式アカウントのフォロワー数が目標数1万5000人に対して2月27日時点で629人と、遠く及ばず問題視されていることが話題になった。

新年度になり、新たな施策に取り組もうとしている広報担当者も少なくないだろう。数値目標は達成度を把握しやすくする一方で、活動の性質に大きな影響を与えるため、活動の目的に合ったものにする必要がある。そこで今回は、注意が必要なSNSの目標設定について考えてみたい。

静岡県は2月1日、若者向けにTwit ter公式アカウント「静岡県庁わかものがかり」による発信を開始した。大学生向け情報誌を発行する県大学出版会の学生らの協力・助言を得ながら、防災、防犯、就職、イベント・観光などの情報を伝わりやすい文章でアピールするという。県広報広聴課は「若者向け情報発信の先進事例にしたい」とコメントを出していた。ところが始まって1カ月ほど経ち、県議会企画文化観光委員会の委員から目標フォロワー数に対して「非常に少ない」などと指摘を受けたことが報じられた。

チャネルひとつでは完結しない

SNS施策に取り組んだ多くの人が味わう「あるある」体験だろう。組織で施策を始める際には目標設定が必要で、フォロワー数や再生回数などが分かりやすく、指標になりやすい。しかし施策を始めた際の「さしあたっての目標」が、ひとたび活動開始すると「守らねばならない基準」になりがちだ。

そこでまず注意が必要なのは、SNS活用の目的と位置づけだ。単発のキャンペーンならフォロワー数を目標とすることもあるが、継続する関係構築・強化なら、関係性の質的変化を見ていく必要がある。リーチ数だけを追うなら広告の方が効率的という見方もある。短期目標と長期目標を分けてマイルストーンを置くという考え方もある。

Twitterひとつで実現するコミュニケーション、あるいはSNSで発信を始めること自体に、大きな意味を持たせすぎないことも重要だ。あくまでひとつのコミュニケーションチャネルにすぎないし、元々SNSはスマホひとつあれば誰でも無料で使えるものだ。費用をかけて決裁を取らねばならないと考えている段階で、すでにコミュニケーションの難易度を上げていることを意識した方がいい。例えば、電話やファクスの使用に決裁を取るなら「活用」はどんどん難しくなるということだ。

大切なのは、全体としてどんなコミュニケーションにするのかを考えて、手段を組み合わせることだろう。有効な目標設定には手順がある。まず何をすればどんな効果があるのか十分な感覚と手応えを事前に得ておくこと、非公式・匿名・個人アカウントなどの形でいいのでどんどん実験をしておくことだ。

どのプラットフォームを選ぶかの議論に時間を使うこと自体がナンセンスである。その上で、コストをかけて活動を加速するイメージがつかめたとき、目標を明確にして決裁を取る。そうすれば、施策を始めたときにあらかじめ実験で使っていたアカウントが告知の媒体にもなり、スムーズな立ち上げにつなげやすい。ステークホルダーとコミュニケーションすること自体に、決裁はいらないのだ。

社会情報大学院大学 客員教授・ビーンスター 代表取締役
鶴野充茂(つるの・みつしげ)

社会情報大学院大学客員教授。米コロンビア大学院(国際広報)卒。国連機関、ソニーなどでの広報経験を経て独立、ビーンスターを設立。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ50万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。個人の公式サイトはhttp://tsuruno.net

    この連載のコンセプト

    ネット上で起きる問題から得られる広報の教訓をまとめたコラムです。かつてのセオリーがすでに通用しないケースも多々あります。ぜひ最新のアプローチを学んでください(筆者)

ウェブリスク24時の記事一覧

ウェブリスク24時の記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する