日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

実践!プレスリリース道場

本物の「宝石キャッチャー」で話題 埼玉県のゲーセンに学ぶ広報術

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

ゲームセンターの中でも不動の人気を誇るクレーンゲーム。その多くは専門の景品業者が供給している中、「滑らない合格祈願キャッチャー」や「宝石キャッチャー」など異色の景品を自分たちで開拓し、テレビで話題となっているのが、ゲームセンター「エブリデイ」を展開する東洋です。

1987年に埼玉県北本市に創業した同社はアミューズメントのほか、リサイクルやITなど複数の事業を手がけてきました。娯楽の多様化で2011年には一度、クレーンゲームから撤退を余儀なくされましたが、代表取締役である中村秀夫さんの「100円玉ワンコインで楽しめること」に対する強いこだわりで、エブリデイ行田店を再開。

2012年にはクレーンゲームの台数が世界で最も多い店舗としてギネス世界記録に認定(当時240台、現在は約350台に増加)されるなど、社長自らがPRに対する意識を高く持って営業を進めてきました。

それでも業界全体が右肩下がりの中、転機となったのが2014年4月に『月曜から夜ふかし』(日本テレビ)で紹介されたこと。当時、ゲームセンター部門の統括責任者だった緑川裕一さんが、藁をもつかむ思いで番組にメールをしたところ、「何もなさそうな埼玉にギネス記録のゲームセンターがある」と話題に。ゴールデンウィーク直前だったこともあり、「翌日は開業以来初めて駐車場が満車になりました」。

このことでPRの重要性が認識され、緑川さんは後に広報・販促責任者に。現場を熟知しているため、現在も自身で新たな企画を考え、リリースを書いて配信までワンストップで実行できるため、早い案件だと企画決定から1週間で配信するフットワークのよさです。

そんな緑川さんの最近のヒット作が「滑らない合格祈願キャッチャー」。景品は縁起物であるダルマをパッケージに描いたトイレットペーパーで、クレーンのアーム部分にゴムが付いており、つかむ場所さえ間違えなければ百発百中で取ることができます。当初はお守りを景品に考えましたが、さすがに神社の授与品をゲームの景品にするのは難しく、次に目をつけたのがこのトイレットペーパー。

「水にすぐ溶ける→問題がすぐ解ける」「アームが滑らない→試験に滑らない」などのかけ言葉も利用してリリースを配信したところ、すぐに地元の情報サイト「そうだ埼玉.com」などに掲載され、順番待ちができるほどの人気ゲームになりました。

原価計算では百発百中で取られると赤字になってしまう設定で、気になるプレイ結果を見てみると、約3週間で1731回プレイされ、景品獲得数が871個と、約1.98回に1個の割合で獲得されています。

「本当はもうちょっと出費を覚悟していたのですが、年末年始はライトユーザーの来店も多く、こういう結果になりました。ワンコインで楽しんでいただけることを大切にしたいのと、この機械単体では採算を考えておらず、これを目当てに来てほかの機械でも楽しんでいただくことを考えれば、たとえ赤字になっても構わなかったんです」。もともと店内に「クレーンゲームの達人」がいて、取り方を指導してくれるなどお客さんに優しい店舗なのです。

7年越しの企画が大ヒット

もうひとつ、同店史上に残るヒット企画が、なんとダイヤモンドやルビーなど本物の天然石が取れてしまう「宝石キャッチャー」です。企画したのは2015年当時、リサイクルショップ「エブリデイゴールドラッシュ」の統括マネージャーだった天沼慎五さん(現・営業部統括マネージャー)。1店舗の店長だった2008年にも同じ提案をしましたが、まだ権限がなく実現には至りませんでした。

「店には指輪などに加工しないと値段が付かないような天然石も多数持ち込まれます。そのころは石の種類も分かりませんでしたが、宝石の勉強をすると種類や価値が分かるようになり、ぜひゲームにしたいと思いました」。そして7年間で集めた1万点以上の天然石をもとに、温めていた企画を実現したのです。

ゲームで本物の宝石が取れるというインパクトは絶大で、『中居正広の身になる図書館』『スーパーJチャンネル』(ともにテレビ朝日)、『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ)、『Nスタ』(TBSテレビ)など数多くの番組に取り上げられました。その結果、同店の機械でひと月あたりの最高売上である27万円を大幅に更新し、48万円を記録。我々の取材時点では設置から2年1カ月で4500万円を売り上げるメガヒットになっています。

クレーンゲームの景品は入れ替わりが早く、2年も続くことは異例中の異例。さらにこの人気を見て海外で宝石を調達する景品業者が現れ、全国に類似キャッチャーが現れるという業界トレンドまで生み出したのです。けれども景品業者が用意できる天然石は10種類程度に限られ、80種類ほどを揃えているエブリデイには遠く及ばないようです。

「ギネス認定」という言葉の威力

ではそのヒットを生み出したリリースを見てみましょう。まず(ポイント1)レターヘッドに「ギネス認定!」「世界一」の文字が躍って、インパクトと信用を与えています。以前も取り上げましたが、ギネス認定には想像以上に費用がかかります …

あと48%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

実践!プレスリリース道場 の記事一覧

本物の「宝石キャッチャー」で話題 埼玉県のゲーセンに学ぶ広報術(この記事です)
5000人以上の声を分析 『ゼクシィ』の調査リリース活用
IoT導入でスマホ充電できるラゲージを投入 新たな市場を切り拓くリリース
ハワイや台湾で入社式!? 企業PRと採用にも直結したトリドールのリリース
メディアが注目の「糖質オフ」 くら寿司の斬新メニューでサプライズPR
TSUTAYAが提案「親子の日」 本を贈る習慣をプレスリリースで啓蒙

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する