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トップが語る 経営と広報

カルビー松本会長が語る広報「社内でもっと評価すべき、責任の重い仕事」

カルビー 代表取締役会長兼CEO 松本 晃

「取材は一切断らない」というポリシーを掲げてきたカルビーの松本晃会長。働き方改革やダイバーシティ経営の先駆者として、常に意見を求められてきた。その上で「広報の仕事はもっと評価されるべき」とも語る、真意とは。

カルビー 代表取締役会長兼CEO
松本 晃(まつもと・あきら)氏

カルビー代表取締役会長兼CEO。1947年生まれ。京都大学大学院修了後、伊藤忠商事に入社。ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカル 代表取締役社長、ジョンソン・エンド・ジョンソン 代表取締役社長、最高顧問などを経て、2009年から現職。

[聞き手]
社会情報大学院大学 学長 上野 征洋(うえの・ゆきひろ)

日本広報学会副会長、静岡文化芸術大学名誉教授。2012年、事業構想大学院大学副学長を経て現職。内閣府、国土交通省、農林水産省などの委員を歴任。早稲田大学卒、東京大学新聞研究所(現・大学院情報学環・学際情報学府教育部)修了。

女性社員への取材が増えた

上野:松本会長は2014年に経済広報センターの「企業広報経営者賞」を受賞されました。カルビーならびに会長自身が数々のメディアで「時代の流れを先取りし、先見力がある」「女性の社会進出を支えてきた」と評されているように、その情報発信力は非常に注目されていると思います。

松本:僕がいつも言っているのは「広報とIRはすべてのステークホルダーに対する窓口であれ」ということ。カルビーは昔も今もいい会社ですが、僕が入社した当初、明らかな弱みがありました。それが広報活動とIRです。

だから広報の重要度は非常に高く、優先順位も上の方に置いています。取材も、どのようなメディアであっても基本的に断りません。最近は私だけでなく他の社員への取材も増えていて、特に女性はしゃべるのがうまい。だから私の出番はだんだん減っていますが、大変好ましいことだと思っています。

上野:広報を大事にすることで、会社を代表してメッセージを発信できる社員が増えてきたということですね。これは女性活用や働き方改革が注目される以前から、長年にわたり意識改革を推進してこられた成果ではないでしょうか。

松本:実際のところはそんなに実現できていません。ただ、トップの発言が活字になると、意外と社内の反響が大きい。いわゆるブーメラン効果というやつです。

上野:メデイアの報道こそが強力なブーメランになると。

松本:社員を一斉に集めて話をしてもほとんど聞いていませんからね。それが分かっているから、どうすればいいか考えるわけです。

例えば、僕と考え方が近い経営者に来てもらって、カルビーの社員に話をしてもらうこともあります。ネスレ日本の高岡(浩三)社長とか。すると皆さんはこう言います。「なるほど!高岡さんはすごい!」と。実際、彼のほうが100倍優秀ですが(笑)、話の内容はいつも僕が言っていることとほとんど同じなのに。世の中とはそんなもんですよ。

上野:それは日本企業の組織の特性でしょうか。

松本:身内の言うことは皆、斜めに見ていてあまり信用しないんです。これは海外でもほとんど変わらないのではないでしょうか。

社員の「学び」に投資せよ

上野:ほかにも、社内コミュニケーションでどんなことを工夫されていますか。

松本:まず、基本的に正しいことを言う。そして同じことを一貫して繰り返し伝えるようにしています。言いたいことはたくさんありますが、あれもこれもと欲張って話しても社員に浸透していきませんからね。新しいことは社外で話して、社内では同じことを話すようにしています

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