奈良の製造小売業、中川政七商店の広報から2015年に独立し上京した鈴江恵子さん。そのキャリアは一貫して「食」の仕事への興味と好奇心で埋め尽くされている。転職や渡仏、広報の兼任から専任、そして独立へと突き動かしたものとは。
アートキャンディショップ「パパブブレ」、スタイリッシュな白衣のメーカー「クラシコ」、福井県に初めて眼鏡産業を持ち込んだ「増永眼鏡」、思い出の服をリプロダクトする「LOOP CARE」──2015年にPRサポート事業を柱に独立した、鈴江恵子さんが手がける仕事は幅広い。リテナーとスポットを含め、常時10社近くのクライアントのPRを引き受けている。
広報職のキャリアは30代に入ってから。奈良県にある創業300年の老舗・中川政七商店への「出戻り」がきっかけで、秘書兼広報を任された。「新卒で入社したのは時計メーカーの営業でした。2年ほど働いたものの、フードコーディネーターの仕事に興味を持って。大阪の設計事務所で食部門に関わった後、ご縁がありカフェを立ち上げて運営し、この仕事は天職だ!と思っていたところに出会ったのが中川政七商店でした」。
20代の鈴江さんの行動力は凄まじい。中川政七商店で本店の店長を経験したかと思えば、2年で退職。食の仕事をしていた友人と突如、フランス行きを決める。現地では自宅で小さなレストランを開いたり、日本企業向けに雑貨を買い付けたり、プライベートでは出産し母親になったりと、目まぐるしく5年の月日を過ごした。
ちなみに一緒に渡仏した友人は、今は良き仕事のパートナー。彼女は現在、国内外でベーカリーの開業支援を手がけ、鈴江さんが各店のPRを担当することもある。
秘書兼広報兼「通販課課長」に
2008年に帰国した鈴江さんは再び大阪で食関連の職を求めたものの、縁あって中川政七商店に復帰することになる。この「出戻り」のタイミングで秘書兼広報となった。
5年ぶりに同社へ戻ると、表参道ヒルズに店舗をオープンするなど会社の事業は急拡大。自らも広報の仕事に留まらず、通販事業を立ち上げた。広報と販売の連携を仕掛け、ECの売上が1店舗の売上を上回り「通販課」へと成長を遂げる。「広報の力で会社の未来を創っていける」という実感もあり、まるでベンチャー企業のような環境は相当のやりがいがあったという …