広報歴15年以上、一貫してヘルスケア領域のPRに携わってきた永田正人さん。30代半ばで、なぜ事業会社からPRエージェンシーへ移ろうと決意したのか。そして双方の立場を経験したことで得られた、キャリアの強みとは。
2017年4月、武田薬品工業の一般用医薬品事業が分社化して「武田コンシューマーヘルスケア」が誕生した。「アリナミン」「ベンザブロック」などを基幹ブランドとする同社には、武田薬品本体とは別に企業広報の機能がある。そのマネジャーを務めるのが、永田正人さんだ。
永田さんは新卒で武田薬品工業に入社、MRや東京本社での広報・IR担当を経て外資系PR会社に転職した。7年にわたりエージェンシーの立場でヘルスケア領域の製品広報や危機対応に従事したのち、武田薬品の広報として再入社し現在に至る。
「PR会社への転職を決めたのは30代半ば。決して武田薬品に不満があったわけではありません。ただ広報の専門書を読んで、共感を引き出して世論を動かすというPRの仕事にダイナミズムを感じ、もっと多種多様なコミュニケーションの現場を経験したい、という思いを強く持ちました」。
もうひとつ永田さんのキャリアの転機になったのが、広報の前に産業別労働組合での仕事を経験していたこと。約4年にわたり医療政策担当として、同業他社の担当者らとともに医療・薬価制度の調査や提言を行った。
「30歳直前の自分には、他社の皆さんと働ける環境は新鮮でした。会社の中では見えなかった世界を見させてもらい、先々のキャリアを考えるきっかけにもなったと思います」。この経験がのちに、PR会社への転職という決断を後押しすることになる。
外資に転職で英語に一苦労
その後、東京本社のコーポレート・コミュニケーション部で2年働いてからフライシュマン・ヒラード・ジャパンへ転職。選挙広報のほか、ヘルスケアに特化したチームで医薬品や医療機器メーカーの企業広報などに携わった。数カ月単位で複数クライアントのメディアセミナーやイベントのプランニングを進めるという経験は忙しさ以上にやりがいがあったそうだ。
一方で、永田さんが最も苦労したのが、外資系では必須とされる英語力。「帰国子女や海外留学経験のある人材が多い環境だったので、日本育ちの身としては大変でしたね(笑)。ただ自分の場合はヘルスケアという一本の軸があったのと、事業会社で働いてきた経験は強みになると思っていました。大手企業で企画を通すために必要な社内手順は理解していたので、クライアントの担当者が上司を説得するにはどんな説明資料やデータが必要か?という意識で常に臨んでいました」 …