「上場はゴールではなく、スタート」──新規上場を経験した広報・IR担当者はこう語る。ここでは、2013年上場のペプチドリームを例に、上場前後にクリアしておきたい広報・IRの課題やポイントを探る。
東大発の創薬ベンチャー「ペプチドリーム」。2017年の平均時価総額の増加額は771億円で7期連続の黒字を確保し、日本経済新聞による中堅上場企業「NEXT1000」に対する調査ではトップに躍り出た。主な事業は特殊ペプチド創薬の開発。株主や国内外の顧客にその価値を伝えるための広報に力を入れている。
広報はエバンジェリスト
ペプチドリームは2006年創業。新規市場を開拓しながら着実に実績を積み重ね、2013年6月に東証マザーズに上場、2015年12月には東証一部に市場変更した。
同社が専任広報を置いたのは川崎市の新本社と研究所の開設を目前にした2017年6月。IR広報部の責任者として、元SBI証券シニアアナリストの岩田俊幸氏を迎えた。岩田氏はマザーズ上場時からカバーアナリストとして同社に関わっていたが、ステークホルダーが増えたことなどから、入社する運びとなった。
就任当時のリリースには、「当社の事業及び技術の内容や、当社の持つポテンシャル及びオポチュニティ等について分かりやすく説明する人材(エバンジェリスト)」として専任広報を設置したと説明。当時社長だった窪田規一会長は、岩田氏について「多くの投資家の皆様から信頼を得てきた方」とコメントし、IRへの期待も寄せていた。
株主への説明を大切に
岩田氏は「株主を大切にしたい」という窪田会長の方針のもと、入社後の半年間で170人以上の投資家の元を訪れ、個別に説明を繰り返してきた …