少しずつメディアでの露出が増え、企業としての認知が広がっていく成長期。GROOVE X、GLM、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの事例から事業も組織も拡大する、成長期のPR戦略を読み解く。
2017年7月、フランスと英国が「2040年までにディーゼル車、ガソリン車の販売を禁止する」との方針を発表した。米国の一部や中国でも、EVなど「排ガスゼロ車」の目標台数の達成を義務付ける規制が導入されている。電気自動車の開発や販売などを行うGLM(京都市)は、このような社会的背景にも後押しされ、COP3の開催地ともなった京都から、世界中にその名をとどろかせている。
国内に先駆けてパリから発信
GLMが注目を浴びるきっかけとなったのは、2016年9月にフランス・パリで行われた「パリモーターショー2016」への出展。4人乗りのスーパーカー「GLM G4」を、フェラーリ、ルノーと肩を並べる形で発表した。
広報担当の河内玲央氏によると、富裕層向けの高級車であるG4は「海外で売りたい」という明確な目標があったため、日本での発表に先駆けて世界の舞台に挑んだ。現地のPR会社と連携した結果、欧米だけでなく中東やアジアのメディアにも多数取り上げられたという。「車は人の命を預かるもの。ベンチャーは特に、『よく分からない企業』と思われがちなので、世界中のメディアに発信してもらうことで、"しっかりとした企業像"をアピールすることができました」。
「自動車メーカー」でありたい
GLMの前身は、京都大学の「京都電気自動車プロジェクト」。2010年に事業化し、2014年に現在の社名となった。2015年に国産で初めてスポーツカータイプの電気自動車「トミーカイラZZ」の量産を開始したほか、EVの基幹部分の開発ノウハウを外販するなど大企業ではあり得なかったビジネスモデルを構築した。
自動車産業では新規企業の参入が極めて難しい。そのため、GLMは広報の目的を「自動車メーカーとして認められること」に置いている。河内氏が専任の広報担当として入社したのは、2017年2月。前職の地方テレビ局のアナウンサーとしての経験を活かし、メディアリレーションに力を入れている …