少しずつメディアでの露出が増え、企業としての認知が広がっていく成長期。GROOVE X、GLM、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズの事例から事業も組織も拡大する、成長期のPR戦略を読み解く。
「Pepper」プロジェクトメンバーが起業
ソフトバンクでヒト型ロボットPepperの開発をしていた林要氏が2015年に起業した、GROOVE X(東京・中央)。家庭用ロボットの開発を手がける同社は2017年12月4日、本社で資金調達に関する記者発表会を行った。テレビや新聞など31社の報道関係者が出席し、満員の会場から注目度の高さがうかがえた。
発表会には、同社の林要社長と投資家らが登壇。最大64億5000万円を調達する契約を締結したことを発表した。さらに、2019年に一般販売を予定している家庭用ロボット「LOVOT(ラボット)」についても、動画を用いて説明。調達金額のインパクトとLOVOTへの期待感から、国内外で239件の記事や番組に取り上げられた。
専任広報の設置は2016年9月。LOVOTの開発を進める一方で、その価値が世の中に認知されることも重要だと感じていた林氏は、元バーガーキング・ジャパン ブランドマネージャーの家永佳奈氏を社員として迎え、広報体制の基礎をつくった。
家永氏によると、同社の広報の目的は、生活者にLOVOTの魅力を感じ取ってもらうこと。製品発売前の現在は、LOVOTに込められた想いや会社の成長ストーリーなどを重点的に発信する戦略をとっている。
企業サイトのアクセスは12倍
2017年8月からは広報チームに元電通ヤング・アンド・ルビカムの布施優樹氏がコミュニケーションディレクターとして入社した。
以降は主に家永氏がメディア対応などの現場を担当し、布施氏がコミュニケーション戦略とプランニング、クリエイティブを担当。前職でタッグを組んだこともある2人で、12月の資金調達発表会とその後のキャンペーンの準備を始めた。家永氏は「多額の資金を調達したGROOVE Xって、一体何をやっているの?」「LOVOTのいる生活ってどんなもの?」という疑問に答え、世の中に企業としての存在感を意識してもらえるようなPR活動に注力したという。
主にコミュニケーション設計を担当した布施氏は「情報があまり出せない段階だからこそ、想像と期待をかき立てるだけでなく、会社のビジョンが反映されるようなスケールの大きなコミュニケーションを展開したい」と林氏に何度もプレゼン。生活者に訴求するため、本来披露する予定はなかったLOVOTの目と鼻のイメージを使用した大型屋外広告やティーザームービーを制作した。
発表会後の反響は予想以上だった。コーポレートサイトのアクセスは12倍に増え、国内外のメディアからの個別取材も受けた。
12月5日(米国時間では12月4日)には、「人類の火星移住計画」という未知なる事業(X)を手がけ、社名も似ている米国の宇宙ベンチャー・スペースX社の本社前(カリフォルニア州・ホーソーン)に看板を設置 …