事業やサービスの開発段階にあるベンチャー企業はその価値を理解してもらうのが難しく、認知獲得が課題となる。「資金調達」の機会を活かしたispaceの広報戦略から考える。
宇宙ベンチャーが101億円調達 “日本発”を印象づけた記者発表会
ispaceの資金調達に関する発表会「ispace Next Mission」の会場は、2017年4月にオープンしたGINZA SIX内の観世能楽堂。日本の伝統文化を体感できる空間で、Founder & CEOの袴田武史氏や投資家らが足袋を履いて登壇した。
1枚の写真で伝える「画づくり」
12月13日に開かれた発表会には、国内外39社81人のメディアが出席。「世界の宇宙産業ナンバーワンの資金調達額」「日本最大の101.5億円の調達」という話題性のある内容だったこともあり、瞬く間に世界中に拡散した。メディア露出は発表会当日から12月18日までの一週間で全世界計310記事に上り、想像以上の結果となった。
同社の広報担当はHAKUTOの広報も兼任する秋元衆平氏と森智也氏。「宇宙産業のマーケットは日本も海外も関係ない」という秋元氏は、世界中の注目を集めるための「画づくり」にこだわったという。
「日本が受け継いできたものづくりの技術を進化させて世界の市場にチャレンジし、ナンバーワンになる」というメッセージを発信するために、この場所を選んだ。伝統文化とGINZA SIXという先端的な施設が融合している観世能楽堂で行うことで、メッセージをより具現化することができると考えた。
課題は社名の認知度向上
2010年に創業したispaceは、「人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ」をビジョンに掲げ、月面資源開発の事業化に取り組んでいる民間宇宙企業。米Xプライズ財団が主催する世界初の月面探査レースに参戦予定の「HAKUTO」の運営も行っている。
近年、ドナルド・トランプ米大統領をはじめとして、月の資源開発には注目が集まっている。そのような時代の流れもあり、HAKUTOはNHKのBS1スペシャル『月へ、夢を~人類初の月面探査レースに挑む~』(2017年3月26日)で110分のドキュメンタリーが放送されるなど、メディア露出も増加。一方でHAKUTOの認知度に比べて、運営母体の「ispace」はほとんど知られていなかったため、社名の認知度を高めることが課題となっていた …