複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
問題の経緯
2017年12月8日
東京地検特捜部は、JR東海が発注したリニア中央新幹線の関連工事で入札妨害をした疑いがあるとして大林組本社を家宅捜索。さらに、同地検と公正取引委員会は同18日に清水建設と鹿島建設、同19日に大林組と大成建設を独占禁止法違反の疑いで捜索した。報道によると、大林組は東京地検などの調べに対し談合を認める説明をしているという。
2017年12月8日、東京地検特捜部が偽計業務妨害の疑いで大林組を捜索。18日には清水建設、鹿島建設、19日には大林組と大成建設を、東京地検と公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いで捜索しました。リニア中央新幹線の建説工事を巡る入札談合があったのではないかとの疑いによるものです。
この入札談合に関して、建築会社4社と発注元のJR東海がそれぞれの立場からリリースを出しました。その内容を比較すると、「取締役の責任」に関する配慮の違いが浮き彫りになりました。
訴訟リスクも見越したコメントを
捜索を受けた4社は、いずれも捜索の翌日にリリースを出し、捜索を受けた事実を公表するとともに「捜査に全面的に協力してまいります」との姿勢を示しました。この姿勢は4社とも共通していました。ただ、プラスアルファのコメントには差異がありました。
大林組と清水建設は「今後さらなるコンプライアンスの徹底に取り組んでまいる所存です」。鹿島建設は「これまでもコンプライアンスの徹底に向けた社員教育、談合防止体制の整備を継続して行ってまいりました。そうした中でかかる事態は痛恨の極みであり、すべてのご関係の皆様に、衷心より深くお詫び申し上げます」と発表しました。大成建設については、プラスアルファはありませんでした。
大林組と清水建設は再発防止を意識したコメントです。他方、鹿島建設は、(1)これまで社員教育、談合防止体制を整備・継続してきたこと(2)それにもかかわらず、今回の事態が発生し痛恨の極みであること、の2つの要素を述べています。特に(1)の要素は重要です。鹿島建設が内部統制システムを整備し、機能させようと努力していたことが読み取れます。
すなわち、取締役や取締役会が、会社法上の内部統制システムの整備・機能に関する義務を果たしてきたことを意識したコメントであると捉えることができるのです …