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トップが語る 経営と広報

トップ自らメッセージを研ぎ澄ます コンカー流「PRドリブン経営」の極意

コンカー 三村真宗社長

スマホとクラウドを活用した、経費管理サービスを提供するコンカー。PR起点でビジネス戦略を組み立てる「PRドリブン経営」を掲げており、規制緩和を実現してきた。国内外のPR関連アワードでも評価されている。

コンカー 代表取締役社長
三村真宗(みむら・まさむね)氏

1993年4月、日本法人の創業メンバーとしてSAPジャパンに入社。戦略製品事業バイスプレジデントなどを歴任。2006年、マッキンゼー・アンド・カンパニー、09年ベタープレイス・ジャパンのシニア・バイスプレジデントを経て、2011年10月から現職。

[聞き手]
社会情報大学院大学 学長 上野征洋(うえの・ゆきひろ)

日本広報学会副会長、静岡文化芸術大学名誉教授。2012年、事業構想大学院大学副学長を経て現職。内閣府、国土交通省、農林水産省などの委員を歴任。早稲田大学卒、東京大学新聞研究所(現・大学院情報学環・学際情報学府教育部)修了。

PRで営業効率の向上へ

上野:2010年の日本法人設立時、知名度はかなり低かったそうですが、今やスマホでの領収書電子化による紙原本の長期保管義務廃止に向けたプロジェクトが認められ、2016年に国際PR協会のアワードで最優秀賞(*1)を受賞、同年9月には改正電子帳簿保存法が施行という快挙を成し遂げました。こうした成功の背景にあるのが「PRドリブン経営」と聞いていますが、具体的にどういう手法ですか。

(*1)「ゴールデン・ワールド・アワーズ・フォー・エクセレンス」(GWA)において、ファイナンシャルサービス&インベスター・リレーションズ部門で最優秀賞受賞(2016年7月)

三村:製品の製造・販売は本社や営業のプロが担うので、社長の仕事は「いかに売れる仕組みや土壌をつくるか」。マーケットを見定めて、どのようなサービスや製品をいつ発信するかが企業の総合力の勝負になります。ですからPRとマーケティングには非常に力を入れてきました。

「PRドリブン」は、時間軸と発信する内容を決めてから製品やサービスの提供時期や要素をつくり込んでいくアプローチ法で、4つの軸からなるストラテジーマトリクスに基づいています。

まず、どのタイミングでどういった製品やサービスを投入するかという「製品発表時期」。二つ目は、どの段階でどんな企業とパートナーシップを組むかという「戦略協業」。三つ目は「発信」で、内容が軽い場合はプレスリリース、重要度が高い場合は記者会見で発信します。四つ目は「イベント」で、製品お披露目やカスタマーイベントをいつ実施するのか。この4つの軸をもとに、向こう12カ月の動きが有機的なストーリーになるように構成しています。

上野:そういう戦略を思いつくきっかけがあったのでしょうか。

三村:ピーター・ドラッカーの著書に「広告やPRが不在のビジネスは、暗闇で女性にウインクしているようなものだ」という文章があるんです。コンカーの製品は米フォーチュン500企業の7割以上が導入するような非常に強い製品です。しかし日本市場では認知度が低いため売れませんでした。

ドラッカーの言葉にならい、まずは明るいところでウインクをしてブランドを立てよう。そうすれば、事業機会をより大きく創出できるのではないかと。そこからPRやマーケティングに力を入れるようになりました。

上野:当時、なじみがない外資系の知見を取り入れようという日本企業は少なかったのではないかと思います。その壁を切り崩し、風穴を開けたわけですね。

三村:世の中で先見の明がある人は全体の5%だと言われています。まず影響力のある大手企業にアプローチして、その5%に入る企業を見つけたら、そこから一気に普及させるというビジョンで走ってきました。そして、マーケティングの両輪として、費用対効果が高く信用のおけるPRの重要度を上げました。

記者会見には私自身も登壇し、発表内容も、その日にめがけて製品やサービスの価値訴求を検討しメッセージをつくり込みます …

あと63%

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