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本田哲也のGlobal Topics

「PESO」で成果指標をとらえる PR効果測定の世界標準とは?

本田哲也

読者の皆さんは広報PR活動の成果をどう測っているだろうか。今回は、広報PRにおける最新の効果測定の考え方について紹介しよう。

ロンドンに本部を置く「AMEC(エイメック)」という組織は20年ほど前に創設され、一貫してコミュニケーション領域における効果測定を専門にしてきた。現在は86カ国にメンバーを抱えるグローバル組織だ。このAMECが中心となって策定したのが「バルセロナ原則」として知られる世界PR業界標準の効果測定ガイドライン。広告換算の否定やSNSへの言及などを含んだ同原則には、33カ国の業界団体が合意。2015年には「バルセロナ原則2.0」としてアップデートされた。

そのAMECが2016年に発表したのが「Integrated Evaluation Framework(統合型評価フレームワーク)」だ。PRの目的の明確化と成果指標の整理、実施面をいわゆる「PESO:Paid(広告)・Earned(パブリシティなど)・Shared(SNSなど)・Owned(自社メディア)」でとらえる点が大きな特徴となっている。

まず「(1)Objectives」。ここでは、「事業目標」と「コミュニケーション目標」をそれぞれ具体的な数値を伴って設定することが求められている。次に「(2)Inputs」だが、ここはいわゆる「与件」。ターゲットとインサイト分析に基づく戦略、そして予算の提示が求められる。次の「(3)Activities」が具体的な実施内容で、「PESO」による整理が必須となる。ここから先が肝心の効果測定に関するセクションだ。

最初の「(4)Outputs」は、実施活動による初期成果(リーチ数やサイトへの訪問者数、露出数や投稿数)のことを指す。この時点ではまだ、その数値が持つ影響力は不問だ。次の「(5)Outtakes」で初めて、活動に対するターゲットの反応やリアクションを見る。いわゆる「エンゲージメント」測定だ。

さらに「(6)Outcomes」でコミュニケーションがもたらした影響について把握する。ターゲットに何らかの変化があったのか、このコラムでもよく言及する「パーセプションチェンジ(認識変化)」「ビヘイビアチェンジ(行動変化)」がそれにあたる。そして最後が「(7)Organizational Impact」。これは最初に設定した「事業目的」で、実際にセールスが向上した、評判が上がったなど、ビジネス上の成果が該当する。

このフレームワークでは「成果」をひとくくりにせず「3つのOut」で仕分けし、整理している。ツールはネット上で無償提供されているので、詳しくはサイトをご覧いただきたい。AMECは2017年には「Say No To AVES」*という広告換算撲滅キャンペーンまで開始している。日本も世界標準から置いていかれないように頑張りましょう。ではまた来月!

*AVE=Advertising Value Equivalency

本田哲也(ほんだ・てつや)

ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/戦略PRプランナー。「世界でもっとも影響力のあるPRプロフェッショナル300人」にPRWeek誌によって選出された日本を代表するPR専門家。著作、国内外での講演実績多数。カンヌライオンズ2017PR部門審査員。最新刊に『戦略PR 世の中を動かす新しい6つの法則』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

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