様々な領域で活躍中の広報パーソンに、転機となったエピソードや仕事における信条、若手へのメッセージなどを伺います。
日本気象協会が2014年度から取り組む、商品需要予測事業。気象情報によって物流の効率化や食品ロス減少を目指すもので、これによる経済効果は1800億円という試算が2017年11月末に発表されました。その仕掛人のひとりが、広報室の吉冨太郎さん。ホテル勤務やIT企業での宣伝・広報担当などを経て、2015年から同協会の広報機能強化に携わっています。
脇の甘さは記者に見破られる
──広報の仕事に携わるようになったきっかけは。
IT企業では宣伝7年、広報を11年経験しました。広報部門に移った当初は、「メディアのこともある程度分かっているから大丈夫」と気楽に考えていたんです。結果、コテンパンにされました(笑)。
失敗談もたくさんあります。発表した数字の解釈を私が誤っていて、「本当にこれでいいんですよね?」と記者の方が何度も確認をしてくれたことがありました。誤報を出していたら大変なことになっていたと思います。「会社の数字を背負って、会社の代表として回答する」という恐怖を心底味わいましたね。広報は脇が甘いとすぐ見破られる、と思い知らされた経験でした。
宣伝は予算や期間が決まっていてゴールから逆算して組み立てますが、広報の仕事は「企業・メディア・受け手」が三方よしになるストーリーやコンテクストを練り上げていくもの。当時、危機対応も経験しましたが「広報の力で、ここまで会社の意思を社会に届けることができるんだ」と実感できたこともキャリアの転機でした。
皆で議論した需要予測プロジェクト
──日本気象協会では、広報部門の基盤づくりに尽力されています。
当協会は1950年設立で、90年代に民間の気象会社が参入し市場競争が生まれました。気象庁と間違えられやすいし、かつては外から実態が見えにくかったと思います。近年は広報体制づくりを進めていて、2017年7月には事業部付の「広報課」だった組織を理事長直轄の「広報室」に改編しました …