日本全国で「自治体PR戦国時代」を迎えている現在。広報の基本と戦略に活かすヒントをこの分野の専門家がお届けします。
今回のポイント
(1)ツアーはメディアにとっての"ロケハン"と考える
(2)スケジュールは、土日の前後で設定する
(3)ひとつの大テーマを軸に具体的に立案する
(4)行く先々に専門家を用意しておく
(5)バス移動中は自由時間を確保する
早いもので本連載も7回目。各自治体、本年度の事業が正念場に差しかかるこの時期に行われる手法として、前回の「メディア向け説明会」のほかに「プレスツアー」があります。初耳の方に簡単に説明すると、「地元の魅力をメディアの方に、実際に来てもらい知ってもらう」というものです。
もちろん移動・食事・宿すべての費用を主催する自治体が工面する、いわばご招待ツアーです。それでは早速、プレスツアーを実践するために知っておきたい5つの極意をお伝えします。
宣伝より「知ってほしい」が肝心
まず、プレスツアーを「記事獲得の手段」と考えてしまうのは間違いです。
そもそも、テレビクルーは決められた行程をまわるプレスツアーで映像を撮ることは不可能なので参加しません。参加メディアは、新聞・雑誌・ウェブが対象になりますが、露出を獲得するための手段として考えてはいけません。
プレスツアーへお越しいただくメディアに「掲載確約」という縛りを設けるツアーも数多く存在しますが、参加するメディアは初めて現地を訪れる方がほとんど。そこで知ること、見ること、体験することを必ず、即記事にするというのは、かなり酷な話です。現に、私は旅雑誌の編集をしていたころ、この縛りのせいで参加できなかったプレスツアーが何本もありました。
(1)プレスツアーは、メディアにとってのロケハン的位置づけにすべきです。百聞は一見にしかずで、ツアーに参加したメディアはその経験を必ず編集会議に持ち込みます。そこで初めて記事にするかを吟味する。その結果、1週間後なのか、時期を見計らって1年後なのか、それくらいのスパンを見据えて記事になっていくのが本来の姿です。
ですから、プレスツアーの第1のポイントは、記事にしてほしい・宣伝してほしいではなく「知ってもらうこと」。ここに重きを置きましょう。
土日の前後に設定がベター
次にスケジュールの立て方です。あらかじめメディア側から出るであろう要望が分かっていれば立てやすいもの。ズバリ要望として多いのは、延泊もしくは前入りです。そのため(2)ツアー日程は土日の前後の1泊2日で設計すべきです。よほど遠方でない限り、2泊3日は長すぎるので避けましょう。
設計は、木曜・金曜もしくは月曜・火曜が理想的です。木・金であれば、週末を使って追加取材ができますし、月・火であれば前入りができます。その際、運営側で交通手段の融通を対応するのが、もうひとつのポイントです。
考え方とスケジュール感をつかんだらいよいよ内容ですが、ここで最大の注意が必要です。欲張らず(3)ひとつのテーマを軸にすることが重要です。
よくあるのが、何でもかんでも、知ってほしいことを詰め込むパターン。これは、参加率を上げるためにも絶対にやめましょう。「このツアーは◯◯地域の△△を知ってもらうためのツアーです」と一言で言えるように編集する必要があります。△△は「魅力」という抽象的な言葉ではなく、具体性のある言葉を入れたいものです ...