広報が付き合うべきは、報道関係者だけではない。業界アナリストとの関係性の築き方について、IT業界を中心に解説していきます。
いよいよ最終回となりました。筆者のところには、BtoB企業の広報担当者やマーケティング担当者から「記者からの取材と違い、アナリストの取材は優先順位を落としてしまっていた」「取材の進め方など発見があった」といった連絡を個別にいただくなど、反響が寄せられているところです。
今回は前回に引き続き、実際にアナリストリレーションズに取り組んでいる企業の事例として、KDDI ソリューション事業本部 ソリューション事業企画本部の小峯陽子さんのもとを訪ねました。
意見交換の機会にも活用
──いつからアナリストリレーションズに取り組んでいますか。
ほぼ1年前から強化を始めました。KDDIの中でも私の所属するソリューション事業本部はモバイルからクラウド、ネットワークに至るまで多岐にわたる業務をトータルに行っています。通信の得意分野が数多くある中で「本業貢献」、つまりお客さまの事業の躍進にお役に立てるような取り組みに注力しています。今はデジタル変革などのキーワードも注目されており、当社でお手伝いできることがたくさんあると思っています。
そのようなソリューション事業本部のビジネスを正しく理解いただくことが狙いです。扱う分野が多いこともあり、アナリストからの取材依頼は多数来ます。リソースの関係から全部を受けることは難しいので、どの取材を受けるのかを見極めなくてはなりません。
当社ではIoTなど注力分野にあたる内容を優先的に受けています。取材時には、アナリストと意見交換をしたり、考えを伺ったり、当該分野の競合他社の動き(公開できる内容)についても聞けるため、大きな利点があります。
取材を受ける前の準備
──社内で受ける・受けないの基準は決まっていますか。
世界的な調査・コンサルティング会社からの依頼については事業部の活動に合う案件を優先的に受け、それ以外はレポートの発行部数、影響力、テーマを考慮して受けるかどうかを部内で決定していきます。公平な調査を装い、競合他社が雇っている企業による情報収集目的の取材もあるため、注意が必要です。当社側が取材を受けるメリットがあるかどうかを調べています。
その後、事前に作成している担当分野の取材対応リストに基づき、適切な社員に取材依頼をします。その際にブリーフィングノート(事前確認資料)を作成し、どんな経歴のアナリストなのか、過去にどのようなレポートを書いており、今回の取材の目的が何であるのかを明確にして、簡単なブリーフィング(取材前の打ち合わせ)をしてから実際の取材に臨んでいます。
「こんなテーマの取材です。当日よろしく」で終わらせてしまうと、意識合わせがうまくいかないこともあると思います。こういった事前のひと手間こそアウトプットのずれを防ぐため、非常に重要だと考えています。このノートを用意するようになってから、社内の協力も得やすくなり、当日の進行もスムーズになりました。
実際の取材時には進行を担当するほか、後日補足の資料を送るなど、アナリストの方がレポート執筆を円滑に行えるようなサポートもしています。また取材後に担当者との振り返りの会議を開き、より一層効果のあるブリーフィングになるよう、日々工夫をしています …