記者と広報は、なぜすれ違う?第一線で活躍するメディアの記者に本音で語ってもらいました。
新聞記者 Aさん(男性)新聞記者の多くは入社後すぐに地方に配属され、力を付けていく。例に漏れず、初めての地方勤務中の若手地方記者。都市部に比べて人との付き合いが濃く、「いい年頃の娘がいるんだけど」と見合いの誘いの声も多い今日このごろ。 |
「おかけになった電話番号は現在使われておりません」。むなしく響く機械音声にあぜんとした。きっかけはある大手百貨店から送られてきたプレスリリース。内容を確認すると、興味をそそられる内容であり、記事化する価値もあると思った。早速、アポを取ろうと記載されていた広報担当者の携帯番号に電話をかけた時の出来事だった。
「問い合わせ先の番号がつながらないなんて、何のためのプレスリリースなのか……?」。当時、私は地方支局に赴任したばかりで、この企業の広報担当者(女性)は初めてやりとりをする人だった。うっかりミスが多い天然な人なのか、社内のチェック機能が働いていないのか。実際に会って話す以前の段階で、第一印象が一気に悪くなった。
どんな職業であれ、最初の印象や対応次第で付き合い方が変わりうる。広報の仕事において、問い合わせ先の電話番号を正確に記載するなど基本のキではないか……。取材する側からすれば「プレスリリースの内容も間違いだらけなんじゃないか」と、はらはらしてしまう。
この時は代表に電話をかけてつないでもらったが、その後のお付き合いの中でも、広報担当者としての基本が抜けていることが気になった。
電話口でアポを入れてくる強引さ
その女性との縁はなかなか切れなかった。地方都市はネットワークが狭いため、たまたま取材で顔を合わせることが幾度かあったのだ。そして、頻繁に取材依頼が来るようになるまでに、そう時間はかからなかった。
通常、記者クラブへの投げ込みやファクスで提供されるリリースは、私個人宛のメールや電話へと変わった。何か催しがあるたびに案内が来るので、紙面に掲載するにふさわしい内容であれば取材させてもらった。しかし、電話口で半ば無理やりにアポイントを入れられるなど毎回押しが強いことが悩みで、時には「これはどうかな……」と躊躇する宣伝じみた話題を記事化せざるを得なくなったこともあった。
それでも特ダネが眠っていそうな「大手百貨店」ということや、顔なじみの彼女の頼みなら、という気持ちもあって、デスクの目を通過するようになるべく社会性を帯びたトーンに整えて原稿を作るように努めてきた …