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2018年版 危機管理広報&炎上対策

社内導入でこんなに差がつく メディアトレーニングの基本と鉄則

山口明雄(アクセスイースト 代表取締役)

取材対応のノウハウは、有事の際のみならず平時から有効だ。日米でメディアトレーニングの講師を務めてきた筆者が、国際基準に基づいた4つの鉄則と基本の考え方を紹介する。

    Q. メディアトレーニングを実施していますか?

    A. メディアトレーニング導入企業は27.1%

    広報会議編集部調べ(2016年12月)

メディアトレーニングとは、メディアの取材対応を「正しく」行うための研修と実施訓練です。「正しく」とは、テクニックではなく、メディア対応にともなう責任をしっかりと認識し、メディア報道の特性を十分に知ったうえで対応することです。

近年、メディアトレーニングを導入する日本企業は増えつつあります。私の元にも、大企業の不祥事が報道される度に問い合わせがあります。しかし広報会議編集部の調査によれば、メディアトレーニングを実施している企業は3割弱と、まだまだ少ないのが現状です。

欧米では、メディア対応はトップだけではなく幹部社員の仕事と考えられています。ですから、当然のこととして幹部社員と将来の幹部候補にトレーニングを受講させます。日本でも「受講なしでのメディア対応は禁止する」との社内ルールを設けている外資系企業はたくさんあります。現場の社員によるネット炎上などのリスクも避けがたい時代なので、日本企業でも社内研修などで全社員がリテラシーを高める機会を持つべきだと思います。

しかし現状、国内で提供されているメディアトレーニングは国際基準からかけ離れています。記者が受講者を徹底的にいじめるスパルタ式や、記者との付き合い方講座のようなもの、「話さないための訓練」を専門に行うものなどです。本来、メディアトレーニングは「メディア対応の社会的責任を認識したうえで、話し手の思いや主張を多くの人に明確に理解してもらえる方法を学ぶこと」に目的があるのです。

あなたの会社の広報チームで「トップや幹部にトレーニングを受けさせなければ」と思い立ったとき、ぜひ本稿の内容を参考にしていただければと思います。

    メディアトレーニングの基礎知識

    ◆トレーニングの種類

    (1)定期的な社内研修

    (2)「緊急記者会見」が迫っている場合の予行演習

    (3)事業説明会、プロモーションイベントなどの予行演習

    ◆受講対象者

    最も一般的な定期的な研修の場合は、組織の代表者、役員、部長に加え、準備と手順確認のために広報部、リスク管理室、法務、総務などからの参加がある。最近は日本でも新任の課長・課長補佐の全員を対象にメディアトレーニングを行う企業・団体は増えている。

    ◆予算

    ピンからキリまで。手ごろなもので約20万円、高いものは数百万円という場合も。

    ◆1日の流れ~模擬記者会見コース(1日)の例~

    *アクセスイーストで実施している例

    【1~1.5時間】講義
    国際基準に基づいたメディアトレーニングの鉄則や、メディア対応の方法を座学で学ぶ

    【3時間】シナリオ準備
    当日の模擬テーマ(事前に準備した事故・事件などの詳細なシナリオ)をベースに、「冒頭スピーチ」「キーメッセージ」「Q&A」などを準備する

    【2時間】模擬記者会見
    会見場を用意し、入場から退場まで完全再現。記者やカメラマンも入り、臨場感がある。終了後には講評を行う

    Q. 模擬記者会見には、実際の記者が来るのでしょうか?

    A. メディアトレーニングのスタッフは講師、記者役、ビデオ担当者で構成されます。記者役は元新聞記者が務める場合が多く、社会部出身の記者が鋭い質問を投げかける場面もあります。なお、秘密保持の観点から現役の記者に記者役をお願いすることはありません。

    Q. どの会社のメディアトレーニングを選ぶべきか迷います。

    A. メディアトレーニングでは、顧客ごとに最適のフォーマットと内容を準備するため、どの会社も幅広い業態の会社や団体に対応できるものである場合が多いです。とは言え、トレーナーによっては専門分野に抜群に強い方もいます ...

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