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2018年版 危機管理広報&炎上対策

不正ではなく「不適切」主張した東芝 メディアの情報操作が逆効果に

ジャーナリスト 磯山友幸

東芝は10月下旬、「不適切会計」としてきた一連の問題を「不正会計」と改めた。あらゆる発表事項が辻褄合わせに終始し、さらに社内広報の体制不全が現在の混迷を招いたのではないかと筆者は問題点を指摘している。

問題の経緯

2月14日

2015年春に発覚した東芝の不正会計。経営層が部下に過剰な業績改善を強いる「チャレンジ」という言葉が注目された。2017年は決算発表延期を繰り返し行い、ついには監査法人の承認を得られないまま発表。東証一部から二部へ降格した。10月24日には臨時株主総会を開き、半導体メモリー子会社売却について承認を得た。

2017年も企業による「会計不正」や「無資格検査」「品質偽装」といった「ごまかし」が相次いで表面化した。すべてのケースに共通するのは「辻褄合わせ」が社内に蔓延していたこと。社内事情を優先させ、顧客や取引先、投資家を欺いても痛痒を感じない社風が不正の温床になっていた。いつから日本企業はそんな組織に変わったのか。

「本当のことを言ったら会社が潰れる」──。おそらく東芝の歴代経営者はそう思っていたのではないか。いくたびも繰り返された記者会見でもそんな「辻褄合わせ」が目立った。東芝は、2015年春に発覚した不正会計がその後も尾を引き、次々と会計上の問題が発覚。監査法人から、なかなか「適正意見」がもらえず決算発表の延期を繰り返す異常事態に陥った。

その間、メディアは様々に報じたが、「辻褄合わせ」に躍起になる会社側の「説明」が時を経ずして覆るケースも相次ぎ、不信感が増幅されていった。「東芝の言うことは信じられない」。そんな風に感じるジャーナリストが日増しに増えていった。

東芝に対する不信感が頂点に

「第3四半期報告書の提出期限を延長せざるを得ない事象が発生したことに伴いまして、予定しておりました決算発表についても延期させていただきます」。2017年2月14日。東芝の綱川智社長は、決算発表会見に集まった記者を前にこう切り出した。

前年末に米国の原子力子会社ウエスチングハウス(WH)で、「数千億円規模の損失」が発生する可能性があると認め、監査法人が決算書にお墨付きを与える監査意見を出すことを躊躇したのが決算延期の理由だった。決算発表は3月14日に延期されたが、それでも監査法人から意見を得ることができず、当日になって「再延期」となった。結局、四半期決算は4月11日までずれ込んだ。

2017年3月期の本決算についても監査法人との対立は鮮明になった。6月末が提出期限だった有価証券報告書の提出を延期し、ようやく監査法人から「限定付き適正」という異例の意見を得たのは8月10日になってからだ。

巨額損失の表面化で、会計不正問題を取材し続けてきたジャーナリストの東芝に対する不信感も頂点に達した。というのも2015年の段階では、どんなに質問が出ても「米国の原子力事業は順調だ」と言い続けていたからだ。

結局、WHをめぐって東芝は1兆円近い損失を計上。WHは米連邦破産法11条の適用を申請する。2017年3月末のことだ。問題の根元がWHにあったことを不正会計発覚から2年たって、ようやく認めた格好になったのだ。

「不適切会計」なぜ貫いたのか

そもそも東芝は会計不正が発覚した当初から、問題を矮小化しようとしていた。その象徴が「不適切会計」という言葉だ。2015年の4月に突然、特別調査委員会を立ち上げたと発表するが、理由については「一部インフラ関連の工事進行基準に係る会計処理について、調査を必要とする事項が判明いたしました」とするに留めた。

それから1カ月以上経った5月になって会見を開くと、「不適切な会計処理があった」といかにも会計上のテクニカルな問題であるような説明をした。翌日の新聞各紙の見出しはそろって「不適切会計」だった。

7月には田中久雄社長のほか、前社長の佐々木則夫副会長ら取締役16人のうち半数が辞任、前々社長の西田厚聡相談役も辞任する事態に発展した。2008年度から14年度の第3四半期までの間に、その時点で1562億円の利益の「かさ上げ」があったことを認めたためだが、それでも頑なに「不適切会計」と言い続けた。

会計を操作して利益をかさ上げすれば、一般には「粉飾決算」あるいは「不正会計」と言うが、東芝はあくまで「不正」ではなく「不適切」だったとしたのだ。会見でこの点を質問されても、「不適切だった」と言うに留めた。おそらく、「不正」という言葉を使った場合、誰かが意図的に粉飾を行ったことを言外に認めたことになると考えたからだろう。社内のどのレベルで決めたことか分からないが、広報資料では徹底して「不適切」という言葉が使われた。

そんな東芝の態度に、その頃からメディアの一部が疑問を抱き始める。「不適切」ではなく、「不正」という言葉を使い始めたのだ。2015年12月には金融庁が東芝を処分したが、その理由には「有価証券報告書等の虚偽記載」と書かれた。虚偽記載はれっきとした法律違反、犯罪である ...

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