日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

トップが語る 経営と広報

ベンチャー企業こそ「広報」と「知財」を重視すべき

ユーグレナ 代表取締役社長 出雲充氏

「ミドリムシ」に魅せられユーグレナを創業して12年。世界から栄養失調をなくすという大きな「夢」を掲げ、その実現に向け着実に歩みを進めている。

ユーグレナ 代表取締役社長
出雲 充(いずも・みつる)氏

1980年生まれ。東京大学農学部卒。東京三菱銀行(当時)を経て、2005年8月ユーグレナを創業(現職)。同年12月、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の食用屋外大量培養に世界で初めて成功。2015年、第1回「日本ベンチャー大賞」内閣総理大臣賞受賞、第31回「企業広報賞」企業広報経営者賞受賞。

[聞き手]
社会情報大学院大学 学長 上野 征洋(うえの・ゆきひろ)

日本広報学会副会長、静岡文化芸術大学名誉教授。2012年、事業構想大学院大学副学長を経て現職。内閣府、国土交通省、農林水産省などの委員を歴任。早稲田大学卒、東京大学新聞研究所(現・大学院情報学環・学際情報学府教育部)修了。

夢の実現へ一歩踏み出す

上野:出雲社長にお話を聞くのは3年ぶりです。前回は、バングラデシュで栄養失調の子どもたちを見て起業を決意したといういきさつや、ミドリムシ屋外大量培養の実現に向けたご苦労などについて伺いました。さらに、2020年に向けた国産バイオジェット・バイオディーゼル燃料の実用化計画についてもお聞きしました。

出雲社長は12年を1サイクルと考えているということでした。2018年は2005年のユーグレナ設立から13年目に入る節目の年です。今回は、次の12年に向けた夢の続きを楽しみにして来ました。

出雲:「続きを聞きたい」という取材は珍しく、本当に有難いことです。2018年については2つの側面があります。ひとつは3年前にお話しした計画が順調に進んでいること。もうひとつは、当時は予想していなかったような大きな変化が起きたことです。

前者については、ミドリムシなどの微細藻類のバイオジェット・ディーゼル燃料製造実証プラントの着工にようやくこぎつけました。場所がなかなか決まらず苦労しましたが、旭硝子が京浜工場(横浜市鶴見区)内に約7700平方メートルの土地を提供してくださいました。お陰さまで2018年10月31日にその実証プラントが完成し、いよいよバイオジェット燃料とバイオディーゼル燃料の製造が始まります

上野:いよいよ夢の続きに近づいてきましたね。

出雲:後者の予想していなかったこととは、フランスや英国が2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を全面禁止すると決めたことです。場合によっては中国までもがそれに続きそうです。大きな流れは予期できましたが、思いのほか速く進んでいるという印象です。

もっとも、自動車は電気に替わっていくでしょうが、飛行機が電動に替わることは絶対にありません。そこで、主にバイオジェット燃料の開発に注力することにしました。それが今、投資家の方々や社会から注目していただけているのは、予想以上に社会の自動車に対する環境技術のテーマが変わったからだと思います

もう一つの大きな変化は、米国のトランプ大統領がCOP21で定めたパリ協定からの離脱を発表したことです。これはネガティブなショックですが、一方で米国以外の主要国はトランプ時代が終わった後の世界を見据えて電気自動車に急速にシフトしつつあります。バイオジェット燃料の需要も高まっています。社会の変化は予想以上にダイナミックですが、大枠では研究をスタートした時の目論見から外れていないと考えています ...

あと66%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する