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米国PRのパラダイムシフト

崖の上のポップアップショップ!?リアル体験への渇望が生み出す斬新なPR

岡本純子(コミュニケーションストラテジスト)

新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。

社会の注目を集めるPR戦略には、常にSomething New(何か新しいもの)の視点が求められる。今回は、特に場所(Where)の視点で、斬新な発想が注目を集めた海外事例をご紹介しよう。

「駅でギョーザ」の新奇性

日本のPRで最もメジャーな手法のひとつとしてあるのが、タレントを呼んだ会見や期間限定でどこかの場所を借りて実施するイベントの類だろう。問題は、マンネリ化しやすいことだ。似たような趣向のイベントではメディアの食指も動きにくい。やはり「これまでなかった何か」という差別化ポイントがないと話題にするのは難しい。

PRにおいては、Who(誰が)、What(何を)、Where(どこで)、When(いつ)、Why(何のために)、How(どうやって)の5W1Hの視点で、新奇性を獲得することが重要だ。7月号のこの連載ではタイミング(When)を活用した事例について取り上げたが、「Where」の視点でも独特な着想で耳目を集めたPR施策が数多く存在する。

日本でも、こうしたユニークなべニュー(Venue=場)をPRに活用して成功するケースが増えている。筆者の記憶に新しいのは、味の素冷凍食品が7月に実施した「ギョーザステーション」だ。冷凍食品である「ギョーザ」の発売45周年の記念イベントで、JR両国駅ホーム上に、期間限定でこのギョーザを焼いて食べられる店舗をオープンしたというもの。

駅という物珍しさ、普段は立ち入ることのできない幻のホーム、夏場に屋外で餃子とビールを楽しめるという季節感など、ニュース性もてんこ盛り。テレビ、ウェブメディアなどで多くの露出を獲得した。これがどこかのイベントスペースでの単なる試食会であれば、ここまで注目されることはなかっただろう。まさに、知恵ならぬ"地"恵の勝利だ。

こうした規格外の発想は海外でもよく見かけるようになった。筆者が最近、感心した事例3つをご紹介しよう。

(1)リアル・ゴッホの家

2016年2月、アメリカのシカゴ美術館は画家・ゴッホの特別記念展にちなんで、彼の有名な「寝室」の絵画をそのまま再現した部屋をつくった。「ゴッホの寝室」の絵が3点まとめて初展示されるという機会をとらえ、美術館が代理店のレオ・バーネットに委嘱して実現させたものだ。しかも民泊サービス「Airbnb」を通じて、一泊たった10ドルで実際に泊まれるようにしたところ、あっという間に予約は埋まってしまった。

このレプリカ寝室は2カ所。ひとつは市内のアパートの一室に作られ、もうひとつは美術館内に5月までの会期中、展示された。このリアル「ゴッホの寝室」は写真で見ても、まるで絵画のよう。絵画を3Dで体感でき、しかも泊まれるという珍しい企画は、きわめてまれなイマージョン(immersion=没入)体験型PRとして、大きな話題になった ...

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