広報部の現場では、効果測定の結果をいかにPDCAに組み込むべきか。カプコンの2016年度の取り組みをもとに、実践例を見ていこう。
- 製品広報は別部門で、企業広報とIRを管轄
- 毎年、広報活動の重点テーマを定める
- 2007年度から広告換算値を年次レポート
- 新聞や雑誌の記事を集め「ニュースサマリー」として冊子化
- 人材採用活動への貢献を重視
カプコンの場合
カプコンの社内では企業広報とIRを担う「秘書・広報IR部」と、事業部門で製品広報を担うチームが分かれている。今回は秘書・広報IR部長の田中良輔氏に、企業広報やIRの観点から効果測定の取り組みと活動方針について解説してもらった。
まず年間の新聞・雑誌・テレビ・ウェブの露出に関しては、リテナー契約しているPR会社から集計レポートが提出される。ただし、あくまで「定点観測」のための資料と位置づけている。「2007年度から広告換算値を算出していますが、何十億円という絶対額よりも前年比で推移を見るために活用しています。翌年度の改善の方針を定め、成果を確認するための目安です」。
同時に重視したのが、経営課題を踏まえた広報活動の強化テーマの設定だ。例えば2016年度には(1)トップ取材の誘致(2)開発者インタビューの掲載(3)研究開発第2ビルのお披露目という3点に絞り込み、新聞・雑誌で適した掲載枠へのアプローチやプレス向け説明会の開催などを企画していった。その結果、実績としては広告換算値で前年比106%となった。
「経営者の魅力や社会への提言を発信する場を増やすことは、特にIRや採用活動への効果が大きいと考えています。今はESG(環境・社会・企業統治)という考え方が重視され、非財務情報の価値も高まっている。日経新聞の『こころの玉手箱』など主要紙の連載コーナーなどを通じて、経営者の言葉を伝える活動に力点を置きました」と説明する。
さらにゲームの開発に携わる社員の声を伝える場を増やすことも、事業部を支援するために重要な取り組みとしている。例えば社内でアニメーターの人員が不足している場合、その職種の魅力を伝えるインタビューの場を設けるなど人材採用への貢献を意識し動く場面も増えてきた ...