業界ごとに存在する数多くの専門メディア。広報担当者にとっては、メディア対応の登竜門となることも多いでしょう。その編集方針やヒット企画、注力テーマを聞き、関係構築のヒントを探ります。
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『東京人』は長く続く街歩きブームや2020年に迫る東京オリンピックを背景に、東京の魅力を探る都会派総合誌。「東京」に限らず「漫画」「浪曲」など、広く特集する姿勢について編集長の高橋栄一氏は「東京を考え、東京から発信する文化を扱うのが二大方針です」と語る。
特色は過去から未来へと行き来して対象を描き、時代背景を探る視点。7月号の特集「土木地形散歩」では渋谷を取り上げ、「明治以来軍部を背景に花街として栄えた円山町」「昭和初期には鉄道発展でターミナルステーションに」「戦後は恋文横丁やセンター街、公園通りへ」と常に華やかな場が移動していく特徴を持つ地と評す。
2月号の特集「平成の浪曲時代がやってきた!」では1947年の芸能人高額所得番付を掲載。浪曲師が上位に並び、大衆娯楽の王者だったと示す。その後衰微したが、近年浅草の専門館「木馬亭」でも若い女性客が増えブームの兆しだと伝える。終戦直後、欠乏感だらけの時代に広く受け入れられたと振り返り、満足を感じられない今の世に再び寄り添うのではと指摘する。
読者の中心は40代以上の男性。落語家の林家正蔵師が飲食店を訪ねる連載エッセイ「ちょいとごめんなさいよ、四時からの悦楽」開始のきっかけは、現役を退きつつある世代の「早くから呑み始め21時には帰って寝たい!」との声だったという。
同誌は国立公文書館や東洋文庫を特集するなど、東京の文化施設を掘り下げ紹介することも多い。高橋氏は各施設の広報担当者に「ひとつでいいからメディアが食いつきそうなネタを早めに提供してほしい」と期待する。アジア研究書籍を収集する「東洋文庫」が改築した際はオープンに先立つ約2年前、広報責任者が訪ねてきた ...