800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、現場の課題や危機管理などの広報のポイントを解説します。
いかなる組織でも公式ウェブサイトは広報活動の主軸となっています。ウェブ関連の技術も高度化して、いろいろなことができるようになりました。私がインターネットなるものを触り始めてから25年経ちますが、まさに隔世の感があります。デザイン的にも凝ったことができ、すごいと思う反面、そこに掲載される記事などのコンテンツは同じように進化しているのでしょうか。
世間と組織をつなぐインターフェイスとなるのは見栄えの良いウェブデザインだけでなく、コンテンツの内容の良し悪しなのではと考えます。
そこで、今回は東洋大学でスタートさせたオウンドメディアについて書こうと思います。
情報量が増えた大学サイト
公式サイトにはニュースやその組織の基本情報などを掲載しています。その中には、決算やIR、採用などに関する情報も掲載されていることでしょう。
例えば、私立大学の財務情報は私立学校法で公開が義務化されていますが、文部科学省の2016年度の調査では、99.8%の大学が公式ホームページで公開しているという状況でした。10年以上前の2004年度には35.2%でしたので、公開手段が大きく変化したといえます。一方、当時一般的だった紙媒体での公表(68.7%)は現在では47.1%まで落ちています。
このことからも情報公開の方法が大きく変わっていることが分かります。そうなると、大学のホームページのコンテンツは従来の紙媒体を取り込み、大幅にページが増加していくことになります。
情報公開というよりも、データの格納を優先するあまり膨大に増えてしまった情報量。「とりあえずウェブへ」ではありませんが、コンテンツが増えすぎてしまっている大学は多いのではないでしょうか。もちろん東洋大学も例外ではありません。
そのため、サイト内の検索性を高めたり、コーポレートサイトやサービスサイトの考え方を導入している大学は着実に増えています。同時にその中のコンテンツをどうつくり込むかが課題として浮き彫りになってきました。オウンドメディアの導入はまさにそうした状況の中から検討を始めたのです。
関係性の編み直しが必要
コミュニケーションツールとしての公式ウェブページのほかに、SNSでの情報発信に積極的な大学もたくさんあります。即時性や情報の流通性などを考えた場合、ある程度有効であることは明らかです。しかし、同じような話題を目にするあまり見過ごすことも多くなっているような気がします。
情報の氾濫は、SNSによって加速しているのかもしれません ...