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実践!プレスリリース道場

毎年恒例のトリンプ「世相ブラ」 効率よく企業イメージをPR

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

4月下旬に、女性用下着メーカーのトリンプ・インターナショナル・ジャパンから恒例の「世相ブラ」が発表されました。JTBがゴールデンウィークや夏休み前に発表する「旅行動向調査」や、第一生命の「サラリーマン川柳」、日本漢字能力検定協会「今年の漢字」と並んでPR業界では定番行事のリリースを取材してきました。

知名度アップのためにスタート

世相ブラが始まったのは1987年で、第一弾は伝統工芸の友禅とのコラボでした。以来、多少の例外はあるものの毎年4~5月と11月の2回ずつ、変わり種のブラジャーを発表しています。

「始まったころは日本で女性の下着といえばワコールさんで、当社は名前も知られていませんでした。広告宣伝費も限られていますし、何か話題になるものをつくって取材をしてもらおうという狙いでした」と説明するのはメディア&コンシューマーマーケティング部ブランドコミュニケーション課PRマネージャーの増田佳子さん。もともと広報目的で始まったものなので、現在も企画から完成、発表まですべてを広報が執り行っています。

やがて、1994年に「天使のブラ」を発売すると知名度が格段にアップ。女性下着業界での地位も確立し、ユニークな企業イメージも定着しています。

そして2017年春の世相ブラは「プレミアムフライデーブラ」。金曜日の夕方に遊びに出かけられるよう、ブラジャーのカップが"がまぐち財布" になっていたり、サイドボーンにはヘアスタイルを整えられるようヘアアイロンが装備されていたりと、遊び心が満載です。

この企画がスタートしたのは2016年12月ごろのこと。だいたい、前の発表が終わってひと月ぐらい休んでからブレーンストーミングを始めるそうです。広報チームのメンバーがアイデアや意見を出し合いながら、候補を2~3点に絞ったところで上層部に打診。発表の2カ月前には縫製チームに依頼して実製品の制作が始まります。

プレミアムフライデーはメディアが多く取り上げていたことと、トリンプ自身が会社全体で積極的に取り組んでいたこともあり、採用となりました。同社では月末の金曜日に直営店で特別なサービスを提供するほか、オフィスでは午後3時になるとチャイムが鳴り、電気も消えて社員たちに退社を促すそうです。その取り組みが、カップとカップの間に時計をつけて午後3時になるとアラームが鳴ったり、電気が消えるとアンダー部分に「PREMIUM FRIDAY」の文字が浮かび上がるアイデアに結びついています。

もう一方のサイドボーンには英会話スクールなどで使えるボイスレコーダーが入っており、遊びだけでなく、自分磨きもできるようにバランスを取っています。同社には子育て中の女性社員も多く、ワークライフバランスの充実も踏まえてこの制度に力を入れているそう。「実際には美容院やまつげエクステなど、自分のメンテナンスに使う社員が多いようです」と同課PR担当の長谷川景子さん。社員の声が企画立案の際に役立っているようです。

そうしてリリースの1週間前をメドに製品を完成させ、いざリリース配信および取材会となります。そのリリースを見てみましょう。(ポイント1)まず、全体の分かりやすい構成に注目です。

1枚目では「プレミアムフライデーブラ」という今年のテーマと、大きな写真で目を引き、関心を抱かせることに特化しています。2枚目と3枚目で細部の工夫を説明し、4枚目で非売品であることなど製品概要を掲載。さらに5枚目に過去の作品を載せることで長く続けていることへの信頼感と、次回への期待感も醸成しています。これを見てプレイバック企画をしたいというメディアも出てくるはずです。

メディアが好むテーマを訴求

1枚目では製品名の「プレミアムフライデー」だけでなく、キャッチとして「消費拡大」や「働き方改革」など、(ポイント2)社会的なテーマを扱っていることを強く訴求しています。いつもお伝えすることですが、社会的な問題や課題に関するリリースはメディアが非常に好みます。

そもそも「世相ブラ」という言葉はメディア側が言い出したもので、社内では「PRブラ」と呼んでいるそうです。当初は必ずしも世相にこだわらず、変わった素材のブラをつくったりしていたそうですが、次第に世相が反映されるようになり、メディアでの掲載数も増えていきました ...

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