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リスク広報最前線

エアバッグ問題のタカタが倒産 不信を招いた消極的な対応姿勢

浅見隆行(弁護士)

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

問題の経緯

2017年6月26日

タカタは民事再生法の適用申請に関して、都内の法律事務所で高田重久会長兼社長による記者会見を開いた。2008年11月に最初のリコールを発表した後、トップが初めて公の場で会見に臨んだのは2015年6月のこと。高田会長兼社長はおわびの言葉を述べたが、遅きに失した一連の対応には批判の声が止まない。

2017年6月28日、エアバッグメーカーのタカタに関し、民事再生手続きの開始が決定しました。2008年11月にタカタ製エアバッグが初めてリコールされてから約9年で、世界2位のシェアを誇っていたメーカーが倒産することになってしまったのです。

リコール問題が会社を倒産させるほどまでに拡大した背景は、タカタの姿勢が消費者の安全を軽視しているように見え、社会や消費者からの信頼を失ってしまったことにあります。そこで、今回は、タカタの一連の広報対応を振り返ります。

ブリヂストン、トヨタのリコールに学ぶ

メーカーが製品の安全性に関する問題を生じさせてしまった場合、消費者の安全を最優先に置いて対処しなければ消費者からの信頼を失うことは歴史が証明しています。その典型が2000年に発表されたブリヂストン/ファイアストンのタイヤリコール問題と、2009年に発表されたトヨタ車のリコール問題です。

ブリヂストン/ファイアストンは、1999年にファイアストン製のタイヤを装着したフォードの自動車による横転事故が連続した際、事故原因が明らかになる前の2000年8月に1440万本のタイヤを自主回収、無償交換するなどの対応を実施しました。

トヨタは2009年に自動車の急加速などによる事故が連続して安全性が問われた際、2010年2月の米下院の公聴会に社長が出席し、その冒頭、謝罪し信頼回復に向けて尽力することを宣言しました。

いずれの問題も当初は会社の対応姿勢に批判の声が上がっていました。しかし、最終的には、消費者の安全を最優先とする対処や姿勢を示したことで消費者からの信頼を取り戻すことができ、事態を収束させることに成功しました。特にトヨタの場合、社長による謝罪の言葉がメディアからも評価され、世論の潮目が変わるきっかけになったとも指摘されています ...

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