日本全国で「自治体PR戦国時代」を迎えている現在。広報の基本と戦略に活かすヒントをこの分野の専門家がお届けします。
今回のポイント
(1)メディアの先にいる視聴者や読者のニーズに注目する
(2)メディアが取材したくなるポイントである「報道価値」を知る
(3)何もないと諦めず、外部の目線も活用して魅力を掘り起こす
「自治体PR戦国時代」に突入してから、ここ数年で全国の自治体に「魅力発信」や「PR」「シティセールス」といった名称の付く部署が増えました。そんな中、多くの自治体を訪れて感じるのは、PR上手な自治体は「パブリシティ」の獲得に積極的で、広告やウェブ制作などにもその視点を活用できているということです。
「パブリシティ」とは、PR活動のひとつで、プレスリリースや応対などメディアに対する様々なコミュニケーションによって、「広告」ではなく、「報道」として紹介してもらえるように働きかける活動のことです。例えばテレビでいうならCMではなく、番組内で自分たちの自治体の情報をいかに取り上げてもらえるかを図るということです。CMと番組内の情報、どちらがより視聴者にとって信頼性が高いかは、皆さんもご存じの通りかと思います。
実際に、前号でも紹介した鳥取県の平井伸治知事のダジャレ「スタバはないけど日本一のスナバ(鳥取砂丘)はある」も、広告ではなく報道番組や新聞などメディアの紹介によって有名になりました。フランス語に聞こえる方言を使った宮崎県小林市のPR動画も、幅広い層に知られるきっかけとなったのはウェブニュースやテレビ番組で取り上げられたことでした。
常に「メディアがパブリシティとして取り上げてくれることは何か」を考え、アンテナを立てておくことは、今や自治体PR担当者の必須条件ともいえる時代になっています。また、「パブリシティの獲得を目指す=こちらの伝えたい情報だけを一方的に発信すること」ではありません。マスコミ側のニーズを捉え、メディアの先にいる読者や視聴者が注目する要素を常に意識するということです。これは、パブリシティを獲得するときだけでなく、広告やウェブサイト、ポスター、動画制作にいたるまで、すべての情報発信において最も必要な姿勢です。
メディアが注目する要素とは?
では、パブリシティはどうすれば獲得できるのでしょうか。最も重要なのは、ズバリ「メディアと同じ目線を持つこと」です ...