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映画で学ぶ広報術

広報なら観ておきたい!今月の1本『サンキュー・スモーキング』(2006年)

野呂エイシロウ(放送作家・PRコンサルタント)

名画から最新作まで、映画に数多く登場する広報・メディアの仕事。1本の作品から、気になるセリフと名シーンをピックアップします。

「何より大切なのは情報操作だ」 Most importantly, we've got spin control.

イラスト/ミツミマリ

今月の1本『サンキュー・スモーキング』
公開 2006年
製作国 アメリカ
監督 ジェイソン・ライトマン
出演 アーロン・エッカート、マリア・ベロ、キャメロン・ブライト、ケイティ・ホームズ、デイヴィッド・コークナー、ウィリアム・H・メイシー

STORY
タバコ研究アカデミーの広報部長・ニック。喫煙者の権利をめぐり上院議員と敵対する中、映画に喫煙シーンを盛り込もうと企む。
サンキュー・スモーキング〈特別編〉
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「これで、この会社の株価を上げてもらえませんでしょうか?」。20年ほど前の話である。銀座のホテルのラウンジで、ちょっとガラの悪そうなおじさんと向かい合ったことがある。ジュラルミン製トランクに1万円札がぎっしりということはなく、何かの紙袋に結構な量の1万円札が入っていた。まるでVシネマのワンシーンのような光景だ。

当時、あるブームを作ったら、ある企業の株価が急上昇したことがある。「お任せを!」と、そのお金をもらってフェラーリでも買いに行きたい欲にかられたがもちろん断った。意図的な株価操作は、広報の仕事ではない。

広報の戦略を立案していて、悩んだとき見る映画がある。2006年のアメリカ映画『サンキュー・スモーキング』だ。タバコ業界によって設立されたタバコ研究アカデミーに雇われた"スモーク"マンではなく、スポークスマンで広報部長の主人公があの手この手で世論を動かしてゆく。

とにかくマシンガントークで政府関係者などをコテンパンにやっつけてゆく気持ちのいい映画である。物語の中心は、未成年にタバコの害を知らしめるため、パッケージにドクロマークをつけさせたい議員との戦いである。

テレビのディベート番組では、肺がんの少年に向かって、「彼が生き続けて、タバコを吸ってくれること、それが我々の心からの願いなのです!」とかまし、いつしか少年と心を通わせ、握手して圧勝。

公聴会では、旅客機、車、チーズにもドクロマークをつけるべきだと主張。チーズのコレステロールが動脈硬化を起こしていると論破してゆく。まさに無敵のマシンガントークである。

監督はジェイソン・ライトマン。『マイレージ、マイライフ』(2009年)の監督や『セッション』(2014年)の製作総指揮などを務めた逸材。

この映画では、アルコール業界、銃業界の広報と3人で集い、自らを"死の商人"と呼び、情報交換をしながらグラスを傾けるシーンが象徴的だ。

日本でも喫煙については話題になっている。もし、本作の主人公のニック・ネイラーを雇ったら、どんなマシンガントークで世論を動かしてゆくのか?気になる。

この映画を観ると、タバコやアルコール、銃のPRに比べたら、ほとんどの広報の戦略を立案するのは容易ではないか?と思うのである。そして映画の冒頭でも語られるように「何より大切なのは情報操作だ」ということだ。悪いことのように捉えられるが、いいことも情報操作で生まれている。そしてもうひとつ。「論理の差し替えも時には大切だ」ということだ。僕もニックのようなマシンガントークの口達者になりたいとつくづく思う。

文/放送作家・PRコンサルタント 野呂エイシロウ(のろ・えいしろう)

1967年愛知県生まれ。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。97年コンサルタントとしての活動を開始。ソフトバンク、ライフネット生命保険、シャープ、ビズリーチなどのプロジェクトに携わる。近著に『超一流の「気くばり」』(光文社)など。

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