テレビ局報道記者出身の弁護士が法務とメディア、相互の視点から特に不祥事発生時の取材対応の問題点と解決策を提言します。
前回、前々回と、従業員が、ホワイトカラー犯罪(*1)と呼ばれる犯罪を起こしてしまった場合に、メディアにどのタイミングでどのようなニュースとして取り扱われるか、どのような広報対応が求められるかを取り上げてきました。前編・中編では、刑事事件の具体的な流れを示したフロー図に沿って、①捜査開始から⑨起訴に至るまでの刑事手続の流れを見てきましたが、後編となる今回は、⑪・⑫の刑事裁判の場面を扱います。
なお、今回もこれまでと同様、「建設会社のA社がX部長を中心に、入札情報を教えてもらう見返りに、東京都のY係長に対して過剰な接待や金品の供与を繰り返していた」という贈収賄事件を題材としており、A社のX部長が贈賄罪で起訴されたケースを想定しています。
⑪ 裁判開始後のスケジュール感をつかむ
刑事裁判は、大まかには、「冒頭手続 → 証拠調べ手続 → 論告・弁論・最終陳述 → 判決」という4つの場面に分けられますが、それぞれの段階で行われる主な手続は、以下のとおりです。
(1)冒頭手続
本人確認のための「人定質問」、検察官による「起訴状朗読」、「黙秘権等の告知」、罪を認めるかどうかを述べる「罪状認否」
(2)証拠調べ手続
検察官による「冒頭陳述」、検察官・弁護人による証拠調べ請求、証拠調べ(証人尋問、被告人質問など)
(3)論告・弁論・最終陳述
検察官による「論告・求刑」、弁護人の「最終弁論」、被告人の「最終陳述」
(4)判決
判決の言い渡し、訓戒
まず、広報担当者として押さえておくべきは刑事裁判のスケジュール感でしょう。第1回公判期日ですが、通常の場合は起訴されてから約1~2カ月後に開かれることが多いです。ところが事実関係が争われていたり、事件が複雑だったりして、公判前整理手続(=第1回公判期日の前に、事件の争点や証拠の整理を行うための手続)が行われる場合、起訴から第1回公判期日までに、半年から1年の期間を要することもあります。
事実関係が争われていない自白事件の場合、第1回の公判期日において、一連の裁判手続のうち、(1)から(3)まで一気に行われることが通常です。その場合、第1回公判期日終了後、2週間後ぐらいに(4)判決期日が設定されます。
他方、事実関係に争いがある事件や複雑な事件の場合には、(4)判決期日までに複数回の公判期日が開かれることになります。事件によっては判決に至るまでに、数カ月以上を要することも少なくありません。公判期日を複数回重ねる事件の場合、公判期日が開かれるたびに事件がニュースとして取り上げられる可能性があり、会社としては報道を通じたレピュテーションの毀損に神経を尖らせ続けることになるでしょう。
広報担当者も裁判を傍聴すべきか
刑事裁判は公開の法廷において行われますが、傍聴できる人数には限りがあるため、裁判所は事件に対する世間やマスコミの関心の高さを考慮しながら、大小ある法廷の中からどの法廷を使用するかを決めています ...