マスメディア対応を中心とした「従来型広報」から、デジタルメディアやツールとの掛け合わせで能動的にコミュニケーションを設計する「ハイブリッドPR」へ。近年の環境変化を踏まえ、いま求められる広報組織と広報リーダーのあり方を問い直す。
デジタルを踏まえた広報へ
編集部:広報の現場で長く活躍され、現在オムロン、日本マクドナルドでそれぞれ部門を率いるお2人に、広報に求められる役割とその変化についてご意見を伺います。
井垣:4年前にオムロンに入社し、現在は110カ国でビジネスを展開するオムロングループのグローバルなコミュニケーション活動の責任者を務めています。オムロンといえば体温計や体重計などのメーカーとして知られていますが、実はBtoCのビジネスは全体の10%ほどです。ファクトリーオートメーションなどのBtoB領域がオムロンのビジネスの9割を占めています。
私自身は大学卒業後、自動車メーカーのマツダでマーケティングを担当し、次にアクセンチュアでマーケティングコミュニケーションを、そして日本コカ・コーラでコーポレートコミュニケーションの責任者をしていました。
玉川:私も、もともとはオラクルやIBMといったBtoBのIT企業を経験してきて、2016年3月に日本マクドナルドに転身してきました。マクドナルドは日本全国に2900の店舗、12万人のクルーが従事していて、年間で8億個のハンバーガーを販売しています。いまは日本の1億2700万人すべてがお客さまといえます。
私の仕事は商品PRにとどまらず、こうした条件を理解した上で、多くのステークホルダーとマクドナルドというブランドをどうつくっていくか、長期的な視点で考えていくことが重要です。特にここ数年のSNSの隆盛によって、私たち企業が消費者とどうコミュニケーションをしていくかも日々問われていると感じます。
数年前から『広報会議』誌上でも「ハイブリッドPR」という言葉を提唱していますが、伝統的なメディア対応に重きを置くだけでは不十分です。デジタルが主体の新しいコミュニケーション活動との掛け合わせが必要になってきています。
井垣:私も玉川さんの「ハイブリッドPR」という考えと同じ意見を持っています。少し前までの広報活動はマスコミをどうハンドリングするか、どうPRしてメディアへの露出を増やすかということに終始していましたが、いまでは長期的な視点でいかにブランド価値や企業価値を上げていくかが広報の使命となっています。
様々なメディアをミックスしてステークホルダーとコミュニケーションし、彼らとの接点をデザインをする。そしてその中でメッセージの一貫性と透明性をどう担保していくか、という部分までしっかりとマネージができなければならないと感じています ...