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広報担当者のためのマーケティング発想入門

PRのヒット量産に不可欠 ドミノ・ピザの根底にある強固なUSP

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

今回から「マーケティング発想のPR」を実践している企業へのインタビューをお届けします。初回はドミノ・ピザ ジャパンを訪問、常に驚きのあるPR施策の裏側を探っていきます。

(左から)
東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業 片岡 英彦(筆者)
ドミノ・ピザ ジャパン 執行役員チーフマーケティングオフィサー 富永 朋信氏
ドミノ・ピザ ジャパン マーケティング部広告課 課長 大槻 昌弘氏

例えばオーストラリアには「3-10(スリーテン)」という、ユニークなプロジェクトがあります。お店に買いに来てくれた人にはオーダー完了から3分で商品をお渡しし、デリバリーの場合は10分以内に配達するという内容です。オーストラリアは商圏が狭いものの一人あたりのオーダー数が多いのでビジネスが成り立ちます。そのために早く焼けるオーブンも導入し店内のオペレーションの無駄を徹底的に省き、最速4分弱でピザが焼けます。

さらにオーブンから出して箱に詰めて保温ラックに置く"ラックタイム"を縮めた。これによって二十数分のデリバリー時間を、10分にまで短縮することができました。モナハンが「30分を過ぎたら50セント引き」と言った日から、時間とロジスティクスにこだわるDNAが刻まれ、今でも脈々と生きているということだと思います。

片岡:10分はすごいですね。USPの怖いところでもあるのですが、リミットを設けて顧客に約束してしまうと「1時間待ってでも食べたい」とか「前日に予約しなければ食べられない」といったポジションは捨てることになりますよね。

富永:そうです。USPがないということは、特徴がないとも言えます。誰にでも支持されるようでは、誰にも支持されないということにもなりかねません。ドミノにしろ、他のブランドにしろ、USPを極めた上でお客さまへの約束は徹底的に守る。一度宣言した以上は、甘くしてはいけないということです。ブランドが強くなる、とはそういうことだと思います。

「顧客の期待に応える」という企業文化

片岡:ロジスティクスの領域も含めて、日本で経営されていて、大事にされているDNAといいますか、「強み」は何だとお考えですか。

富永:ロジスティクスのスピードを支援するIT技術や、オペレーションのインフラとなる組織です。ハードとしてのITやインフラと、ソフトとしての企業文化とも言えます。その両輪が回っています。

例えば「GPSドライバートラッカー」という技術があります。全バイクにGPSがついていて、店からの経路、速度、商品受け渡しの時間をすべて見ることができます。店内ではオペレーターが何にどれだけ時間がかかっているか、流れをモニタリングしています。

片岡:「3-10」は日本では難しいでしょうか?

富永:「10分以内」は地理が異なるので難しいですが、じゃあ何ができるんだろうと突き詰めて考えれば、必ず会社のUSPは強化されると思います。

片岡:できない理由ではなく、できる方法を考えていくわけですね。

富永:なるべく顧客の期待に応えるようにする、という企業文化があります。雪や台風の日であっても、いざというときに確実にお届けできるのはドミノ・ピザだという存在でありたいですね。

ドミノ流・プレミアムフライデーの迎え方

片岡:この話の流れでお聞きしにくいのですが、2016年末のクリスマスに、ピザを求めて店舗に想定以上の行列ができたという騒動がありましたね。

富永:はい。ご期待いただいた皆さんには申し訳なかったと思っています。通常、デリバリーとテイクアウトはだいたい半々ですが、あのときはテイクアウトの需要が集中し、多くの店舗でお客さまに商品をお渡ししきれない状態になってしまったんです。クリスマスに向けて積極的なプロモーションを続けたところ、予想を上回る注文をいただいてしまいました。

片岡:私もマクドナルド時代、あるキャンペーンで店舗のビーフパティが一時的に不足して、あるメニューが提供できなかったことがありました。どういう状況だったかはよく分かります。

継続的に攻めのキャンペーンを実施されているからこそ、お客さまの期待値も上がっているということだと思いますが……いつもプロモーションが尖っていて面白いですよね。2016年のクリスマスはトナカイにピザを配達させようと試みていましたし(写真)。どこまで本気のニュースなのか、冗談なのか何とも判別しがたい内容でした(笑)。

さらには2月24日の初のプレミアムフライデーに合わせて、あえて憂鬱な翌週の月曜(2月27日)にピザを食べよう!と勧める「アンニュイマンデー」という企画もありました。常に想像の斜めを行っていて、あの視点のずらし方の狙いを知りたいです。

大槻:プレミアムフライデーの初回は必ず盛り上がると思っていましたので、そこに乗らない手はないと思いました。ただし世の中の声は「早く帰れて嬉しい!」ではなくて、「本当に帰れるのか?」という本音だったと思います。我々はそこに着目して、懐疑的な気持ちを持っている人たちの声を拾いました。

富永:タキシードを試着すると「俺カッコいいな」と思うじゃないですか。でも、それを着てパーティーに行くと、みんなタキシードを着ていて埋没してしまう。人目を惹こうと思ったら、紋付き袴を着て行くのが正解です。プレミアムフライデーのキャンペーンで「金曜日に何かしよう」というのは、タキシードを着てパーティーに行くのと同じです。我々は「紋付き袴」を着たと思います(笑)。

片岡:そこが独自性ですね。

富永:いかに目立つかという話だと思います ...

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