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映画で学ぶ広報術

広報担なら観ておきたい!今月の1本『ワグ・ザ・ドッグ ウワサの真相』(1997年)

野呂エイシロウ(放送作家・PRコンサルタント)

名画から最新作まで、映画に数多く登場する広報・メディアの仕事。1本の作品から、気になるセリフと名シーンをピックアップします。

「最低1日は必要だ」 I'm gonna need a day. At least a day.

イラスト/ミツミマリ

今月の1本『ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ』
公開 1997年
製作国 アメリカ合衆国
監督 バリー・レヴィンソン
主演 ロバート・デ・ニーロ、ダスティン・ホフマン、アン・ヘッシュ

STORY
米大統領のセックス・スキャンダルが発生。戦略広報のプロ(もみ消し屋)と映画プロデューサーが架空の戦争をでっち上げ、国民の関心をそらそうと暗躍するコメディ映画。
DVD 1429円(税別)
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

某日22時、スマホの呼び出し音が僕を呼ぶ。某テレビ局の報道関係者だ。「野呂さん、メールを見てほしい。これは事実か?事実なら、当事者にインタビューをさせてほしい」と告げられた。慌てて確認すると翌日の朝刊の「早刷り」が添付されていた。そこには信じられない事柄が綴られていた。

記事の内容は、その時点では「嘘」だが、数日後には「現実」になる内容が書かれていた。「24時間前にこの情報を知っていれば、打つ手もあったのに」と思いながら、次の手がまったく浮かばない。"広報戦争"は、4日後に僕の完敗で幕を閉じたのだった──。

その時、ロバート・デ・ニーロの「最低1日は必要だ」という言葉を思い出す。『ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ』(1997年)という映画のセリフである。物語は、大統領がホワイトハウスにサマーキャンプに来ていた少女と不適切な関係を持ち、情報がワシントン・ポスト紙に漏れたことから始まる。クリントン大統領のスキャンダルと重なる話だが、実際に問題が発生したのは映画公開の翌年のことだ。

この状況をなんとかするために雇われたのが、ロバート・デ・ニーロ扮するスピン・ドクターと呼ばれる"もみ消し屋"。"戦略広報のプロ"である。

中国滞在中の大統領の帰国を1日延長し、架空の戦争をでっち上げるところから始まる。嘘のニュースで、次の大統領選までの11日間を乗り切ろうと彼らが協力を依頼したのは、ダスティン・ホフマン扮する映画プロデューサー。アルバニアを仮想敵国として嘘のニュース映像を合成で製作し、米国人英雄が捕虜になったということにして、人々の関心をそらしてゆく。そう、スキャンダルよりも大きいのは"戦争"だということなのだ。

1979年のイランアメリカ大使館人質事件の時の「黄色いリボン運動」を模した「使い古した靴(オールド・シュー)」キャンペーンや、「We Are The World」をパロったキャンペーンソングを展開させるなど、次第に世論を巻き込んでゆく姿は、本当にワクワクする。

この映画を観ながら、1冊のノンフィクションの本を思い出す。NHKのディレクター・高木徹氏が書いた『戦争広告代理店』(2002年)だ。戦争とPR会社の関係が書かれているが、詳細はまたの機会に。だが、この映画の手法は、現在は難しい。というのもグーグルで検索をすれば、即座に真実が知られてしまうからだ。現実社会でもこの映画ほどではないが、嘘のニュースで混乱させることは、なきにしもあらず。だから、戦略広報はやめられない。

残念ながら、僕はこれまで秘密裏に政府に呼ばれたことは一度もないし、ニュース映像を捏造したことも一度もない。むろん、あったとしても公表できないだろう。

文/放送作家・PRコンサルタント 野呂エイシロウ(のろ・えいしろう)

1967年愛知県生まれ。『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で放送作家デビュー。97年コンサルタントとしての活動を開始。ソフトバンク、ライフネット生命保険、シャープ、ビズリーチなどのプロジェクトに携わる。近著に『超一流の「気くばり」』(光文社)など。

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