ブログや掲示板、ソーシャルメディアを起点とする炎上やトラブルへの対応について事例から学びます。
トランプ米大統領のTwitterが注目を集めている。フォロワー数2400万人以上を抱える彼がツイートすれば瞬く間にネットに広まり、マスコミでもニュースになる。彼が敵視すればフォロワーが同調して一斉に攻めてきたりもする。ツイートで株価も動く。もしもそうした攻撃が自社に及んだら、という想定で、広報が考えておくべきポイントをまとめてみたい。
敵半分、味方半分
今回の問題は、ノードストロームのイヴァンカ・ブランドへの対応をトランプ大統領がTwitterで批判したことにある。注目すべきは、大統領報道官が記者会見で、これは「大統領の娘」に対する攻撃だと批判し、大統領は家族を守るために行動する権利があると語った。
さらに問題は大統領の上級顧問がイヴァンカ・ブランドを買いに行こうと呼びかけたことにもある。一方のノードストロームは、扱いをやめる理由について、同ブランドの売上低迷によるものと説明。ノードストロームの株価はこの日、上昇している。
まず知っておきたいのは、トランプ氏について、どちら側のスタンスをとっても、敵味方がそれぞれ半分ずついる、ということだ。そうしたスタンスは必ずしも自分たちの意思で積極的に選ぶ場合ばかりではない。
大統領就任直後に出したイスラム圏7カ国からの入国を禁ずる大統領令をきっかけに、IT企業のトップが相次いで反対する声明を出した。それは自社で多くの移民を雇用しており、米国人だけではベストな人材を集めきれない事情があるからだ。小売業などでは消費者が不買運動を起こしてプレッシャーをかけるなどの事情があり、そうした境遇からスタンスを決めざるを得ないことも珍しくない。
企業のトランプ Twitter対策
警戒感が高まる米国企業では、War roomと呼ばれる対策室を設けてツイートを監視するほか、起こり得るシナリオを複数検討し、大統領のTwitterで突然批判されたとしても、数時間以内にTwitterで声明を出すように準備しているという。理由はこうだ。
大統領のTwitterは各メディアで継続的にウォッチされており、メッセージが出されるとそれが直後にニュースになる。特定企業への批判なら、その企業の反応を見た上でニュースにするが、すぐに反応がなければ大統領のツイートだけのニュースになる。それは自社のスタンスを広めるチャンスを逸することにほかならない。
大統領のTwitterで批判されたとしてもそれを新たなエンゲージメント構築の機会と位置づけて、Twitter上で積極的に大統領と直接やりとりし、ステークホルダーにもしっかり見える形で対応すべしという声もある。情報が広まった同じチャネルでコミュニケーションすることが重要という考えだ。
多くの日本企業では、自社サイトに声明を載せる程度で終わりにしがちだが、この機会に対応を検討し、しっかり準備しておきたい。
ビーンスター 代表取締役 鶴野充茂(つるの・みつしげ)国連機関、ソニーなどでPRを経験し独立。米コロンビア大院(国際広報)卒。日本パブリックリレーションズ協会前理事。中小企業から国会までを舞台に幅広くコミュニケーションのプロジェクトに取り組む。著書はシリーズ50万部のベストセラー『頭のいい説明「すぐできる」コツ』(三笠書房)など多数。最新刊は『頭のいい一言「すぐ言える」コツ』(三笠書房)。公式サイトはhttp://tsuruno.net |