広報部門の重要ステークホルダーともいえる日経新聞と他メディアの違いは何か。組織の特徴や企業文化、記者の教育などについて、日経で15年間記者を経験した筆者が解き明かす。
広報担当者にとって日経新聞は、他の一般紙とは違う存在かもしれない。読者にビジネスパーソンが多いので記事の経済への影響が大きいというのはもちろんだが、「うちのトップが毎朝読んでいるので気になる」という声もよく聞く。日経での記者経験をもとに、他紙との違いやどんな点に注意しながら記者と付き合えばいいのかについて説明したい。
すべての上場企業に担当記者
日本経済新聞は「経済紙」と呼ばれることが多い。ただ、日本新聞協会などの分類では読売新聞や朝日新聞などの全国紙と同じ「一般紙」であり、いわゆる業界紙、専門紙などとは異なる。組織を見ても、社会部や政治部、文化部など他の一般紙にもある部署は一通り揃っている。最大の違いは、他紙であれば「経済部」がカバーしている分野を細分化し、複数の部で分担している点だろう。
日経にも経済部はあるが、担当しているのは金融機関と日銀、経済官庁、経済団体だけだ。裏返すと、銀行以外の一般事業法人は担当していない。トヨタやパナソニックがどんな新製品を開発しているか、ユニクロやイオンがどこに新店舗を出すのかといったニュースは企業報道部が取材している。さらに特殊なのは、同じ企業でもテーマによって複数の部が取材しているケースがあることだ。
例えば、決算の数字がどうなりそうかといった財務情報や、株価の動きは証券部が追っている。つまり、トヨタやイオンでもそうした記事は証券部が書いているのである。
こんな具合だから、企業取材に当たる記者の比率は一般紙に比べ圧倒的に高い。例えば上場企業であれば、新興市場であっても必ず1社1人担当記者がいる。ちなみに『日経会社情報』の解説を書いているのはその記者である。
なお、『週刊東洋経済』や『週刊ダイヤモンド』、同じ系列の『日経ビジネス』などの経済誌と比べると、日経新聞が報じる内容はかなり異なる。端的に言えば日経は事実関係を速報する「ストレートニュース」に力を入れている。日経などで報じられたニュースの背景を深掘りし、詳しく解説するのが経済誌であり、この点の棲み分けははっきりしている。
「体育会系」の社風
日経の記者と付き合う上で知っておきたいのは、社風が意外と「体育会系」だという点だ。企業相手の取材が多いため …