他紙より早く書きたい記者と、メディアを通じて広く発信したい広報。利害が一致して意気投合することもあれば、すれ違い激しくやり合うことも。上場企業に勤める『広報会議』読者の広報パーソン4人が、記者との向き合い方について語った。
春彦さん
流通小売会社に勤務し、他部署を経て広報に異動し9年目。メディアは日経が最重要としながらも、思うところがあって"日経ファースト"をやめた。
夏夫さん
メーカーを経てソフトウェア会社勤務。複数社で広報歴13年目。記者が関心を持ちそうなネタを次々に繰り出す。他社の広報とのネットワークも幅広い。
秋代さん
業界の変革に挑戦する新興IT関連企業に勤務。前職含め広報歴12年目。"日経ファースト"のあり方には疑問だが、関心を示してくれた記者は離さない。
冬美さん
情報通信関連会社で広報体制の立ち上げから携わる。広報歴5年目。会社の知名度を高めるため、新聞、テレビ、雑誌、オンラインとアグレッシブに攻める。
経営陣に多い"日経好き"
─平時から情報交換する記者について教えてください。
秋代▶ 記者にも様々な人がいます。会見やインタビューの質問でいきなり核心を突いてくる方もいれば、「事業内容から詳しく説明してください」と、業界知識もなく丸腰で取材に来る方もいます。
春彦▶ 以前担当した記者は、編集以外の他部署から異動してきた"素人"でした。最初の頃は知識がまったくなく、的外れな記事が頻発してヒヤヒヤしたものです。
夏夫▶ どの新聞社も記者を丸腰のまま現場に放り出す傾向にありますよね。特に新入社員の場合はもう少し社内教育をしてほしいと思うことはあります。
秋代▶ 前任の記者がすごく熱心な方だったのに、今の方は全部電話で済まそうとします。電話だけで分かるのかと、そんな取材なら何もしゃべらないよ、と言いたい!
─記者の異動が多いのは各社に共通した特徴ですね。普段はどんなやりとりをしていますか。
春彦▶ プレスリリースを出すと、日経の記者からは確実に連絡が来ます。それに加え、定期的に役員や商品担当者への取材申し込みがあります。載る載らないはともかく、最低でも週1回は連絡を取り合っていますね。
担当記者は、日経は企業報道部と証券部から1人ずつ。他紙は特定の担当はなく、その都度来られる記者とやりとりしています。親しくなった方もすぐに異動するので、特定の記者と深く付き合うより、多くの記者との出会いを大切にしています。どちらかと言うと、一期一会の関係ですね。
秋代▶ 私は一度深くやりとりした記者との関係が長く続くことが多いです。当社はビジネスモデルが少し複雑で、理解してもらうまでに労力と時間がかかることが理由のひとつ。記者はそれぞれ独自の情報源を持っているので、「前は俺のところにネタを売り込んできたのに、今度はそっちかよ」とそっぽを向かれたくないというのもあります。
夏夫▶ 一斉に配信するプレスリリースとは別に、それぞれの記者がどんな記事を書きたいかをイメージして、特に関心がありそうな話題が出てきたら公開する前に持ちかけたりしています。それを記者ごとにバランス良く振り分けて、みんなに良い思いをしてもらいつつ、結果的には記事を大きく扱ってもらえるように心がけています。
─新聞の中でも日経を重視している会社は多いですね。
春彦▶ 日経は最も重要なメディアと位置づけています。掲載実績もダントツで ...