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広報担当者のためのマーケティング発想入門

広報・マーケティング担当者の鬼門?「異業種コラボ」の難しさ

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

いま、広報担当者にマーケティングの視点が求められています。今回はPRの一手段として「異業種コラボレーション」の企画・実行の手順を解説します。

スターバックスとビームスのコラボによるキーホルダー型の電子マネー「STARBUCKS TOUCH The Drip」。

マーケティングや広報部門の担当者の方たちと話をしていると、「異業種コラボ」による宣伝PR活動の話をする機会が多い。例えば私が面白いと最近気になったのは、スターバックス コーヒー ジャパンとビームスとの異業種アライアンスによるキーホルダー型の電子マネー「STARBUCKS TOUCH The Drip」である。双方のブランドが想定する「共通(理想)の顧客」のIdentityに寄り添う形で企画されている。

本来、店舗での支払い手段として使うのであれば、ビームスのキーホルダーでなくともいいわけだが、そこは店舗で利用できる電子マネーの種類が限られるスターバックスならではのコラボだ。確かに、カウンターにたくさんの電子マネーのカードロゴが並ぶステッカーはスターバックスの店舗には似合わない。販売数は多くないようで、通販で買おうとしたが品切れであった。さらに希少価値は高まる。

そもそもどうして「コラボ」は必要か?

話は変わるが、私のこれまでの経験上、異業種に限らず「コラボ」によるPR活動は難しいと考えている。理由はいくつかあり、図1のとおりだ。

図1 企業・広告会社・PR会社 考え方の違い

そもそもどうして「コラボ」PRは最近特に話題になるのか、必要とされるのかについて考えたい。その背景には1960年代から2010年代に至るまでの消費心理や購買行動、市場動向の変化がある(図2)。消費者革命と呼ばれた1960年代はアニメキャラクターなどの活用が増え、70年代には公害や環境問題が取り沙汰され「社会的責任」が問われるようになる。80年代のバブル期のコラボといえば「スポンサーシップ」などの「協賛」が中心だったが、1990年代に入るとコーポレートコミュニケーション、CSR、メセナといったキーワードが登場する。

図2 時代の変遷と「コラボ」の関係性

こうして1960年代の高度経済成長期から大まかに時代を顧みると、いつの時代にも企業による「コラボ」は、種類や形を変えて進化しつつ存在していることが分かる。古くは注目・認知(attention)の獲得のため、やがて責任(responsibility)や評判(reputation)、忠誠(loyalty)の獲得へと移行している。近年は、絆・共感(engagement)の構築や共創(Creating Shared Value)を目指す傾向にある。

マーケティング視点での「良いコラボ」

ここで、どうすれば企業コラボが成功するのかをマーケティングの視点で考えてみたい。広告予算の豊富な大企業では、これまでも多様なメディアを駆使し(メディアミックス)、消費者にいかに重層的に(360度展開で)、自社や自社商品の情報を届けていけば良いかを考えてきた。ところが、ネットやブログ、SNSなどの新しいメディアの重要性が増すにつれ、消費者の趣向や行動、どのようなメディアを利用するかなどは、個々人によって細分化されてきている。

これは日ごろ、大学で学生たちと接していて直に感じることだが、特に若い世代の方たちは「興味がある」と思えば、自分からいくらでも情報を無料で取りに行く。スマホ・タブレットを使い瞬時にしてコンテンツなどに触れる。その一方で、「興味がない情報」にはこれまで以上にスクリーニングがかかって接しなくなる。SNSのタイムライン上には「自分が好む情報」だけがフィルタリングされ流れてくる。

マスメディアを通じて「多くの情報」に触れた結果、「自分にとって重要な情報」を選ぶのではない。ソーシャル化の進展により、最初から膨大な「無駄な情報」には触れないで済むようになった。企業が発信するブランドメッセージは、これまで以上に精度の高い「自分ごと」化された情報しか潜在顧客には届かない。

この「他人ごと」を「自分ごと」に変化させる「ストーリー」の構築は、単に自社の視点で商品情報や企業情報を送り届けるだけでは実現できない。情報の受け手(オーディエンス)が関心を持ちやすい「空気(社会的関心ごと)」と自社との接点(コラボレーション)が必要となる。企業・ブランドが異業種を含めた多様な相手と「コラボ」あるいは「スポンサーシップ」を行う理由と意義はこの点にある(図3)。

図3 個人の趣向の多様化とSNSによるスクリーニング

CSR・CSV視点の「良いコラボ」

次にコーポレートコミュニケーションの視点では、どのような形のコラボレーションがCSRやCSVとして有効だろうか。最近では ...

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