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大学広報ゼミナール

30年続く短歌コンテストでUSR活動によるブランディング

榊原康貴(東洋大学 総務部広報課 課長)

800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、現場の課題や危機管理などの広報のポイントを解説します。

2016年11月26日に行われた「現代学生百人一首」の最終選考会の様子。5万首以上の中から100首に絞り込む作業は緊張に包まれている。

企業価値やブランドイメージの向上を目指すCSR活動に取り組んでいる読者の方も多いと思います。大学の場合にはC(Corporate)をU(University)にかえて「USR」と呼称し、大学としての社会的責任を大学経営の中に取り入れようという動きになってから10年近くの歳月が流れました。大学の目的は教育基本法や学校教育法が定める教育・研究・社会貢献で、広報活動はそれらを成果として取り組まれています。

また、社会貢献と広報は高い結びつきがあり、社会貢献に関する内容は記事化されやすい傾向にあります。そこで今回は、そうした社会貢献活動の一環として行われている「現代学生百人一首」を通じた広報活動や仕掛けづくりについて書きたいと思います。

30回で累計約134万首の応募

多くの大学で様々なコンテストが実施されていますが、長年続いている企画もいくつかあります。それらに見られる、広く社会に門戸を開いて作品を集め、大学のリソースを活用して世に公表するといった仕組みは一見単純なようですが、最も重要になるのが仕掛けづくり。それが応募者を巻き込むムーブメントになり、多数の応募や話題づくりにつながる可能性があるのです。

東洋大学で開催している「現代学生百人一首」は2016年で30回目を迎えることができました。全国の学生が創作した短歌を東洋大学に送り、そこから100首を毎年選ぶというコンテストです。「現代学生のものの見方・生活感覚」を詠み込むというテーマ設定で、毎年5万首以上の応募があり、現在までの応募総数は約134万首。短歌募集のコンテストでは老舗であり、最大の応募総数を誇っていますが、実はこのコンテストは広報課が様々な「仕掛け」をしているのです。

東洋大学の創立100周年(1987年)企画から始まったこの取り組みは、すべて広報課が窓口となり、企画・告知・募集・審査・発表まで全面的に携わっています。募集の告知は毎年6月ごろから始め、作品を創作してもらう時期は「夏休み」を想定しています。そうです。夏休みの宿題とすることで応募につなげようという試みなのです。

「学生や生徒」は主に高校生や中学生を想定していますが、小学生や専門学校生などもその中に含め、多くの学生たちに門戸を広げています。中にはまとめて1000首以上の応募がある学校も。こうした学校をあげての取り組みになっているところでは、ご指導いただく先生方のご協力が必須です。

30回目を迎えた昨夏は先生向けのセミナーも開催し、選者による「創作のポイント」などをレクチャーしました。こうした企画立案も広報課が主体的に行っています。

選考が終わり、ここからが広報課が本領を発揮する場です。応募された短歌の中から ...

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