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REPORT

米国視察で見えてきた、企業の社内コミュニケーションのトレンド

経済広報センター

PRエージェンシーが考えるインターナルコミュニケーションのトレンド、そしてグローバルでブランド価値が高いとされる企業による取り組みとは。経済広報センターが2016年秋に実施した、米国シアトルでの調査からレポートする。

経済広報センターは、これまでほぼ毎年、欧米で企業広報調査を実施している。今回の調査テーマは、日本企業の間でも関心が高まっている、「グローバル企業のインターナルコミュニケーション」。2016年9月27日から3日間にわたり、米国シアトルで実施した調査レポートをお届けする。米国のグローバル企業のインターナルコミュニケーションの全体像やトレンドについてはPRエージェンシー2社、具体的な取り組みは個別企業3社で調査した。このミッションには、日本から企業8社が参加した。

企業のスポークスパーソンはCEOよりも「社員」である

エデルマン

「社員と会社」「社員と社員」「社員と社会」の3つの関係性において、強いつながりを感じるときに、社員は(1)Focused Behavior(集中的行動)(2)Aligned Behavior(連体的行動)(3)Advocacy Behavior(擁護的行動)を示してくれる。

エンゲージメントの高い社員がいる企業は、利益率が高く離職率も低い。そして、生産性や顧客満足度もとても高い。また、最も信頼性がある企業のスポークスパーソンは、CEOよりも『社員』であると考えられているため、米国企業は、様々な手法で社員のエンゲージメントを高めるためのアプローチを行っている。

今日の社員は大変忙しく、リーチすることが難しいため、お客さまと同じように社員の注意も引く必要がある。そのため、エデルマンでは、エンプロイーエンゲージメントに「コンシューマー・マーケティング・アプローチ」を取り入れている。1977年以降生まれの“ミレニアル世代”は、モバイルの使用が中心のライフスタイルが根付いているため、モバイルアプリなど様々なチャネルを通してコンテンツを発信することを推奨している。

社員が自らの言葉で語るソーシャルメディアの投稿を推奨

ウェーバー・シャンドウィック

ベータ版の「Facebook at Work」を経て、2016年にリリースされたFacebookの社内SNS「Workplace」(画面はイメージ)。

社員が発信する情報は信頼度が高く、より広く遠くの人々まで届けることができるため、社員にシェアする権限を与えることは非常に重要だ。さらに、社員の約3分の1は、自社の何らかの情報をオンライン上に投稿しているため、ウェーバー・シャンドウィックは、実際に社員が自社について何を語っているのか、どのような内容を投稿しているのかにも注視していくべきだと考えている。

また、自社のことを、社員自身の言葉でソーシャルメディアに投稿するよう推奨している場合とそうではない場合では、社員の行動に大きな差が見られる。前者は後者と比較して、社員が知人に製品の購入やサービスを勧めたり、会社についてポジティブなコメントをしたり、擁護したりする人の割合が圧倒的に高い。つまり、社員に投稿を推奨することによってソーシャルネットワークの力を借り、売上を伸ばしていくことにつながる。

そのため、多くの先進企業では、社員が会社の情報を共有・拡散させるための様々な新しいツールを活用した施策を打ち出している。同社は自社内でも、Facebookが企業向けに提供するコミュニケーションプラットフォームサービス「Workplace」を活用している。

社員を“スーパーファン”に変えるための5つのポイント

マイクロソフト

マイクロソフトでは、社員を主要なステークホルダーとして見ており、社員は自社の“真のファン(エンプロイーファン)”なってくれると考えている。エンプロイーファンには段階があり、社員を“スーパーファン”に変えていくため、2016年は(1)マネージャーのコミュニティ(2)社員行事、イベント(3)エンプロイー・インフルエンサー・プログラム(4)オンライン・ウエブ・エクスペリエンス(5)社員の心に耳を傾けるシステム、の5つのことに注力している。

そのなかでも、社内SNS「Yammer」を買収した同社ならではの斬新な取り組みとして、月に1回、サティア・ナデラCEOとのQ&Aセッションを実施している。世界各国の社員が、ライブストリーミングでその模様を視聴したり、Yammerを通して質問したりすることが可能だ。

また、CEOの発言に対し、Q&Aセッションの最中に投票をし、リアルタイムで社員の反応を確認することもできる。このデータを分析し、社員の心に耳を傾けることで、より効果的な形で社員とのコミュニケーションを強化しようとしている。

ブランドの魅力は「人」 パートナーがストーリーテラー

スターバックス

シアトルのスターバックス米国本社にて、取り組みに関するレクチャーを受けた。

スターバックスブランドの魅力は、そこで働いている「人」であるとし、有能なパートナー(同社は、社員やアルバイトスタッフのことを「パートナー」と呼ぶ)に長く働いてもらうために社内コミュニケーションに加え、確定拠出年金や大学の学費負担など、パートナーにとって本当に意味のある、様々な福利厚生に投資している。

同社は、FacebookやTwitter、Instagram、Google+などのプラットフォームを通して、世界中のお客さまやパートナーとコミュニケーションをしている。パートナーが自社のメッセージを広めていく「ストーリーテラー」としての重要な役割を果たすことで、1週間に8000万人ものお客さまにメッセージを届けることができている。パートナーの平均年齢が26歳と若く、ほとんどがソーシャルメディアを普段から利用している世代で構成されているため、どこに何を投稿すれば、パートナーに見てもらえるかを考えて戦略を立てている。

社員とのコミュニケーションの鍵はマネージャー層にあり

ボーイング

ボーイングでは、社員とのコミュニケーションのキーパーソンは、マネージャー層であると考えている。同社のマネージャーは1万5000人いるが、そのマネージャーの理解がなければ、会社のメッセージを部下に正しく伝えることはできないという考えからだ。そのため、会長やCEOレベルとマネージャーが顔を合わせて会議を開催しているほか、幹部が直接現場に足を運び、積極的に社員と関わりエンゲージするための「現場ウォーク」を推奨している。同時に、社員がマネージャーからのメッセージを本当に理解できているかも確認している。

また、工場で働く社員のほとんどが職場でパソコンを使用せず、パーソナルデバイスを連絡手段として活用しているため、最新のアプリ「Boeing Now APP」の運用を間もなく開始する。

文/経済広報センター 佐桑 徹(常務理事・国内広報部長)
古川典子(国内広報部主任研究員)

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