いま、広報担当者にマーケティングの視点が求められています。今回は飽和状態の市場における、商品PRとマーケティングの連携の考え方を解説します。
経営戦略論のひとつに「ブルーオーシャン」「レッドオーシャン」という考え方がある。念のために解説すると、ブルーオーシャンが新規で開拓する手つかずの市場(青い海)であるのに対し、レッドオーシャンは競争が激化している既存市場(赤い海)を指す。言うまでもなく、レッドオーシャンにおける商品PRは非常に難しい。
そもそも商品に関わる「マーケティング」と「商品PR」とはどこが違うのか?あまりそんなことは考えたこともないかもしれない。端的に言うならば「マーケティング」では商品ができあがる前の商品開発やコンセプトにも携わる。「商品PR」はすでにできあがった商品のコミュニケーションから携わる。相互に意見交換などを行うことは当然あるが、あえて線引きをするならば境界線はここにある。
PRの仕事でよく苦労するのは、この「マーケティング」「商品PR」の担当者同士の「価値観」のすり合わせと相互理解だ。例を挙げて説明したい。
例えば「ハンバーグ弁当」という何の変哲もない商品を新たに発売するとしよう。商品開発に携わる立場のマーケティング担当者は、少しでも新商品が魅力的になるようにと工夫をして他の商品との差別化を考えるだろう。商品PR担当者も同様だ。いかに新商品の魅力を伝えることができるか、コミュニケーション戦略を考える。両者とも新しい「ハンバーグ弁当」を市場に投入して定着させたいという思いは共通だが、必ずと言っていいくらい考え方に違いがある。
価値観の境界線と比較対象の違い
もちろん、マーケティング担当者が常に図1のように楽観的なわけではない。また、商品PR担当者が常にこのように悲観的なわけではない。
だがイメージとして「価値観の境界線」を理解していただけただろうか。マーケティング(商品開発)担当者は「ハンバーグ弁当」という既存のカテゴリーの中で、既存の自社や他社の商品よりも「おいしく」「お手ごろ価格」「新しいアイデア」などで売り出そうと苦労する。比較の対象は自社や他社のこれまでの「ハンバーグ弁当」や、同じ場所で販売される競合商品(例えば「焼肉弁当」「鶏のから揚げ弁当」など)のことが多い。
一方の商品PRの担当者は、メディアや一般消費者が「興味を持つかどうか」「話題になるかどうか」という視点から考える。比較の対象はメディアや消費者の口コミなどでこれまでに「話題となった」商品や、今「ブーム」として取り上げられている「ネタ」である。例えば2016年に流行った「ピコ太郎」や話題の「テーマパーク」、あるいは「最近の街ネタ」などが競合だ。
ハンバーグ弁当の商品開発者が「ジューシーさがウリ」と言った場合の「ジューシーさ」は商品自体の魅力に関する「ウリ」ではあるが、メディアに取り上げられたり、世間で話題となったりする際に効果的な「ウリ」とは限らない。「ジューシーさ」を訴求してもインパクトや希少性に欠けるため、メディアや消費者はただそれだけでは話題にしようとは思わないのだ。このように、商品PRの担当者は、日々、プロジェクト開始のスタート地点から「レッドオーシャン」に直面する。
「気づき」「ストーリー」の創出
こうした「レッドオーシャン」の市場で、いかに需要を喚起していくか。この点が商品PR担当者にとって大きな課題となる。言うまでもなく ...