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リーマン・ショックによる需要激減、LCCの台頭といった環境変化のもとで経営のかじ取りを任された伊東信一郎氏。丁寧なコミュニケーションで従業員や株主の理解を求めつつ、次の時代に向け攻めの姿勢を貫いた。
増資に株主の理解求める
上野:伊東会長は2009年4月に全日本空輸の社長に就任されました。リーマン・ショックの翌年という、逆風下でのトップ交代でしたね。
伊東:苦しい時期でした。旅客需要は激減し、2009年度は史上最悪の決算を記録しました。競合する日本航空は、経営破たんを経て公的資金が投入されました。我々も本当に厳しい状況でしたが、自分たちの足で立ち続けようと奮い立ちました。情報を開示して従業員と危機感を共有し、創業者の言葉である「現在窮乏、将来有望」を合い言葉に、何とか乗り切りました。
上野:株主とのコミュニケーションでもご苦労があったのでは。
伊東:その通りです。公募増資を決めた際には、株主の皆様から「株式価値を希薄化するな」とお叱りを受けました。しかし、厳しい状況だからこそ、機材を刷新して競争力を強化し、海外展開にも力を入れていかねばなりません。それこそがANAの将来の成長につながると信じ、株主の皆様にもご理解いただくよう努めました。
上野:時を同じくしてLCC(格安航空会社)が台頭した時期でもありました。ANAグループも参入しましたね。
伊東:関西国際空港を拠点とするピーチ・アビエーションを立ち上げたほか、成田国際空港を拠点にエアアジア(本社・マレーシア)との合弁会社を設立しました。ともに2012年のことです。海外LCCの日本進出が想定される中、攻めの姿勢こそ最大の防御だと考えたのです。
当初は、海外で成功していたエアアジアは大丈夫だろうと見込む一方で …