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REPORT

次世代広報に求められるスキルと心構え

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広報専門の社会人大学院「社会情報大学院大学」の来春の開学を記念したセミナーが2016年11月19日に都内で開かれた。メディアから見た広報対応のほか、危機対応やSNS時代の広報についても話題に上った。

400人を超える応募者の中から抽選で選ばれた140人超が来場した。

第1部は数多くのスクープを世に送り出してきた『週刊文春』の新谷学編集長が登壇。「むき出しの本音がビッグメディアを介さずに世の中に流布する今こそ、メディアや広報のあり方が問われています」と警鐘を鳴らした。スクープをつかむのに大切なのは「風を読む」こと。新谷編集長は大学時代に打ち込んだヨットに例えて、「さざ波が立つなど、風の前には何らかの予兆がある。常にアンテナを高く張り巡らして、かかとを浮かせて準備しておく」ことが重要と述べた。

続いて、「悪い広報」の例として、「逃げる」「隠す」「嘘をつく」の3つを挙げる。中でも、「嘘をつく」ことは広報として最もやってはいけないことだと新谷編集長は強調する。「私たちメディアは誰かをおとしめるために取材をしているわけではなく、ただ事実を明らかにしたいだけなのです。企業とマスコミをつなぐ窓口である広報が丁寧に対応することで、たとえ厳しい取材であってもソフトランディングするケースはあるはず」と説いた。

広報がとるべき危機管理術

2017年4月に開学する社会情報大学院大学の教員陣について説明。

第2部では「企業の明日を創る広報」をテーマにローソン常務執行役員の宮﨑純氏と社会情報大学院大学の上野征洋学長が対談した。宮﨑氏は広報と社長室を統括し、自席は玉塚元一会長と竹増貞信社長の間にある。「いつも会長、社長と話をしているという恵まれた環境にある」と話すように、まさに経営と一体化した広報活動を実践している。

ローソンがニュースを発信する際は、「背伸びをしない。身の丈以上に伝わるおそれのある情報を世に出さない」ことが大前提だと宮﨑氏は説明する。

各事業部から広報にリリースしてほしいという要望があった場合には「独創性」「季節性」「時事性(社会性)」の中から最低ひとつは当てはまる情報でなければ世の中に出さないようにしている。「これらの要素を踏まえていなければ、実際に記者会見を開いてもぼんやりとした、独りよがりの内容になってしまう」と宮﨑氏。一方で、スープの需要増という社会的背景と季節性が盛り込まれた11月の「冬のスープ説明会」は成功したケース。多くのメディア露出につながったという。

続いて対談は広報部門が関わる危機管理の話題に。上野学長が「企業広報の真価は、大抵リスクが生じたときに露わになる」と話すと、宮﨑氏はこれまでいくつかの謝罪会見に携わったと返した。同社ではリスク管理統括室を置き、常にリスクチェックを行っているが、実際にネガティブな事態が発生した際、いつ世の中に発信するかは広報室が判断をしているという。

「今の時代、事故や不祥事が起きた時に対応を間違えると会社の屋台骨そのものが崩れてしまうことになりかねません。確かに会社の利益を考えれば世に出したくない情報もあるでしょう。しかし、大切なのはとにかく先に情報を出すこと。どんな情報も隠せない世の中である以上、メディアよりも先手を打つことがその後に主導権を握れるかどうかの鍵を握っています」と宮﨑氏。「リスクは確率論ではなく、万が一のことがあったら終わり。常に最悪を想定する必要がある」とも語った。

ローソンの宮﨑純常務執行役員(左)と社会情報大学院大学の上野征洋学長の対談。日ごろの広報活動からリスク対応まで話が及んだ。

広報に求められる「常識力」

長年広報業務に携わってきた宮﨑氏が、広報人に必要なセンスや力は何かと問われると「常識力だ」と答えた。広報は社会や業界に今起こっていることを常に分析し、自社の強みや弱みを確認しなければならない。広報は世の中からのレピュテーションを左右する立場。危機管理についても、自分たちを守ろうとするのではなく、お客さまの立場に立った対応が求められる。

「そうした判断は常にスピーディでなければなりません。そう考えると、広報にはいつもマニュアルを見る暇はない。だからこそその対応が世の中から支持される常識力を養うことが広報人の能力の底上げにつながるのです」(宮﨑氏)。

次世代広報のあり方とは

第3部では社会情報大学院大学の教授陣が登壇。リスクマネジメントをテーマにした白井邦芳教授のプレゼンテーションでは、危機管理の際に大切なポイントとして常に物事を俯瞰してみる「ヘリコプタービュー」と、その情報が事実なのかどうかを必ず自分自身の目で確かめる「アイボールキャッチング」という2つの習慣が欠かせないと述べた。

また、SNSでの炎上の仕組みを解説。情報の蓄積性があり情報伝播のスピードも速いSNSでは情報の制御がそもそも難しい。そうした事実を踏まえた上で、白井教授は「他社事例をケーススタディとして常にチェックし、もしもの時の最良の対処法を学ぶ必要があります」と強調した。

続いて地域活性化や自治体ITを専門とする榎並利博教授はマイナンバー制度にまつわる講演を実施した。自治体や企業広報が無視できない「地方創生」において、マイナンバーが担うものは大きいと榎並教授。「マイナンバーはデジタル社会における信頼性を担保する基盤のひとつ」と語った。

最後に池田紀行客員教授はソーシャルメディアで生活者が自由に発信する時代における、これからの広報のあるべき姿について述べた。「電車でスマホを触っている人の親指の動きに注視してほしい。彼らは0.1秒でその情報を次々に取捨選択しています。そのユーザー感覚を常に培うことはこれからの広報にとって欠かせない」と話した。

第3部は社会情報大学院大学の教員がそれぞれの専門領域について解説。

白井邦芳教授

榎並利博教授

池田紀行客員教授

日本初、広報・情報の専門大学院が2017年4月に開学します。

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