複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
11月8日午前5時すぎに福岡市の博多駅前2丁目交差点で発生した陥没事故は、迅速な危機管理対応が光りました。市は、同日午後から道路を埋め戻す復旧作業を開始。事故現場で地下鉄のトンネルの延伸作業を施工していた作業員からヒアリングを実施し、外部有識者を交えた専門委員会を立ち上げ地下鉄の延伸作業について検討しました。
さらに9日午前には、電気、ガスなどの関連企業を集めた会議を開催しています。その結果、9日午前には銀行のオンラインシステムが復旧、12日には電気・上下水道・ガスが復旧、13日には電話線が復旧、14日には道路の埋め戻し作業がいったん終了し、15日午前5時に通行規制や周辺ビルへの立入制限解除に至りました。また同日、工事を請け負った共同企業体を代表して大成建設の村田誉之社長が市内で会見を開きました。
外国人にも情報発信し不安を解消
JR博多駅近くでの事故であったため、駅のエレベーターや自動改札機が使えず、従業員を自宅待機とする企業もありました。「陥没の範囲が拡がらないか」という不安の声も挙がっていたようです。しかし市による対応が迅速だったこともあり、次第に、不安の声は小さくなっていきました。特に市民の不安解消に役立ったのが、福岡市と高島宗一郎市長による市民目線の情報発信でした。
市の公式サイトトップページでは、事故発生当日に「博多駅前2丁目交差点付近の陥没事故の復旧状況について」と赤地に白抜き文字のバナーを設置し、事故に関する情報を発信する専用ページを設置しました。
情報発信のページには、当初の復旧作業計画のほか、日々の進捗状況、報道発表資料、周辺施設や建物の状況、外国人向けの情報を掲載しています。また、事故現場周辺の企業の声に対応して ...