新聞記者、PR会社を経て活動する岡本純子氏によるグローバルトレンドのレポート。PRの現場で起きているパラダイムシフトを解説していきます。
イギリスのEU離脱(Brexit)の国民投票、米大統領選など歴史的な出来事が相次いだ2016年。現代史の節目ともいえる激動の年となったわけだが、その余波はグローバルのPR業界にも押し寄せている。今、どのようなパラダイムシフトが起き、これからどう変わっていくのか。2017年のPRトレンドを予測しながら、その流れを読み解いていこう。
トランプ勝利で変わった常識
2016年のビッグサプライズは何といっても米大統領選だろう。クリントン勝利を予言していた多くの欧米のPR業界関係者の間には大きな衝撃が走った。皆、その「巨大地殻変動」に愕然とし、体勢の立て直しに必死の様相だ。この期におよんで彼らが気付かされたのは、これまでの「常識」と「非常識」が一夜にして入れ替わったこと、そして、誰よりも分かっているはずの有権者や消費者のインサイトを実は把握しきれていなかったということだ。
アメリカのプロフェッショナルたちが気付き始めたこれからのPRのパラダイムとは何なのか。以下、8つの切り口から考えていきたい。
TREND1
ソーシャルメディア is King
トランプはほぼすべてのマスメディアを敵に回し、そのメディアの大方の予想を裏切って勝ったわけだが、彼の強力な情報伝達ツールとなったのがソーシャルメディア、特にTwitterだった。パンチがあり、短く、ストレートな言葉でメッセージを発信し続け、それを支持者らが拡散し、爆発的な伝播力を発揮したのだ。
トラディショナルなメディアのみならず、ハフィントンポストなどのオンラインメディアもこぞってトランプ批判を繰り返したが、支持者の考え方は頑として揺らぐことはなかった。マスメディアというチャネルと運命をともにして歩んできたPR業界にとって、その権威と信用に傷がついたのは大きな打撃だった。ソーシャルメディアの圧倒的なパワーをどれだけ活用していけるのか、改めて問い直す2017年となることだろう。
TREND2
ポスト・トゥルース時代の「真実」
日本でも最近話題になったインチキ情報サイトだが、アメリカはその比ではない。特に保守系のウソニュースサイトが乱立し、徹底的にクリントンをこきおろし、今回の選挙戦に大きな影響を与えたと言われる。その内容たるや、まったく根拠のないデマや偏見ばかり。例えば、急激に成長している保守派のニュースサイト「ブライトバート・ニュース・ネットワーク(Breitba rt News Network)」。「避妊する女は魅力がなく、気が狂っている」など女性やLGBT、イスラム教徒などに対する差別的な話でいっぱいだ。会長のスティーブ・バノンはトランプの選挙キャンペーンを主導し …