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広報担当者のためのマーケティング発想入門

原田泳幸さんに聞く「経営トップの決断、その裏にある広報戦略」

片岡英彦(東京片岡英彦事務所 代表/企画家・コラムニスト・戦略PR事業)

今回は特別編として、数社で経営トップを歴任してきた原田泳幸氏に筆者がインタビュー。経営における広報の重要性から、現場に必要なスキルについて考えていきます。

明日の新聞の見出しを想像して、コーポレートメッセージを発信できているか?

広報メッセージは経営者が考える

片岡:私は日本テレビの出身で、15年前にアップルコンピュータの社長だった原田さんに初めてお会いしました。テレビ局時代は番組宣伝担当だったこともあり、あまり広報活動を特別なものと思っていませんでした。全国放送されることが当たり前でしたからね。その後、さらに私はアップルやマクドナルドで働く機会をいただき、原田さんは社内外を問わず広報活動をとても大事にされていると感じていました。

原田:広報は経営トップがどれだけオーナーシップを持つかで成否が決まります。もしもこの『広報会議』を現場担当者しか読んでいないとすれば、それはあまりよくない状況ですね(笑)。

経営者にはまず事業戦略が重要です。そして、それを成し遂げるための「人材=人」が欠かせません。素晴らしい「人」を動かすという意味でも、事業をステークホルダーにしっかり伝えるという意味でも、広報は重要です。片岡さんがよくご存知のアップルやマクドナルド時代にも、様々なコミュニケーションに取り組んできました。例えばマクドナルドでは大規模な商品発表会だけでなく、社員全員を一堂に集めたキックオフミーティングもあった。当時は1年間毎日欠かさず、社内向けブログを書いて社員にメッセージを発信し続けていました。

片岡:2011年には経済広報センターの「企業広報経営者賞」を受賞されましたよね。

原田:一気にマクドナルドの店舗閉店に踏み切った状況下で、「戦略的閉店」という言葉を用いて発信したことが評価されました。閉店という決断はネガティブに捉えられがちですが、「これはあくまで戦略の一環、ブランド価値向上のための施策なんですよ」と伝えるためのメッセージです。

そういえば当時、授賞式の挨拶で「広報が作成したスピーチの原稿や、想定問答集は1回も使ったことがない。経営者である私自身が作成して広報に渡すんです」と述べたことを覚えています。経営トップは自分の頭で広報メッセージを考えるべき、という考えは今も変わっていません。その上で、広報にしっかりと指示をする。記者は広報に細かいフォローアップを要求してきますので、そこを広報チームがフォローして成り立ちます。広報担当者が私のスピーチに肉付けを行う余地を持たせるという意味でも、最初のメッセージはトップが考えないといけないと考えています。

事業計画の段階で広報の視点を

「原田さんにはニュースリリースの内容までダメ出しされた」という片岡氏。アップル、マクドナルドで原田氏のもと働いた経験がある。

片岡:原田さんがこれまで、最もコミュニケーションに時間を費やしてきたステークホルダーは。

原田:アップルは日本での上場企業ではなかったので、最も配慮したステークホルダーは既存ユーザーでした。一方で、マクドナルドでは社内の現場の人たちとのコミュニケーションを重視していましたね。ベネッセでは様々な問題が就任当初に発生しましたが …

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