2017年もこのコラムをよろしくお願いします。日本のPR業界がさらに成長することを祈願しつつ、今回は2016年12月に発表された「PRアワードグランプリ」の結果と、そこから「日本のPRの未来」を考えたい。
成果指標における「広告換算禁止」など、審査基準や審査員を大幅に刷新した今回のPRアワード。ふたをあけてみればエントリー数は107件と前回の57件を大きく上回り、その内容も質の高いものとなった。そこからブロンズで10作品、シルバー、ゴールドでそれぞれ4作品が受賞し、グランプリにはコンカーと井之上パブリックリレーションズが手がけた「スマホを活用した領収書の電子化プロジェクト」が輝いた。規制緩和まで実現させた、骨太な成果が評価されたと言えるだろう。
審査自体には参加しなかったものの、最終審査会場でシルバー以上のプレゼンテーションは直接聞くことができた。僕なりに感じたのは次の3つのキーワードだ。ひとつは「リレーションズ」。PR=パブリックリレーションズなので当たり前とはいえ、森永製菓と電通の部活キャンペーン、岐阜県関市とオズマピーアールのシティプロモーションなど、マーケティングカテゴリーでもリレーションの創出意識が高いものが目立った。
次に「ヒューマンタッチ」。デジタルプラットフォームやソーシャル活用が当たり前になってきたからこそ、直接的なつながり要素が担保されているかが重要になる。ポーラのインナー施策やアッヴィの心臓病の子どもたちのキャンペーンなどにはそれが色濃く感じられた。最後に「PRドリブン」。グランプリ作品やカルビーフルグラの「朝食革命」で言及されていたが、戦術としてのパブリシティではなく、経営やマーケティングの推進力としてのPRだ。経営者やトップリーダーがPRを「武器」として使う時代の到来を強く感じさせた(とっても良いことである)。
もちろん楽観的な要素ばかりじゃない。多様なステークホルダーの分析やリレーション構築、ヒューマン要素をおろそかにしない丁寧なプログラムは日本の美点だが、それは「HOW」の領域でもある。「WHAT」の領域世に打ち出すストーリーをどうつくるか、そのアイデアやクリエイティビティはまだ物足りなさもある。マジメな日本の中でもマジメな人が多いこの業界だが、もう少し勇気とウィットをもつ必要もあるかもしれない。
2016年のカンヌライオンズで、映画『プラダを着た悪魔』のモデルで有名なアナ・ウィンターが、優れた雑誌ブランドには「Immediate interest and lasting significance(瞬間的な興味喚起と普遍性をもった意義づけ)」が必要と発言していた。これはPRにも当てはまる。「瞬間的な興味喚起」は広告だけの仕事ではない。クリエイティビティの強化で日本のPRはもっと強くなる。さあ、2017年も良い仕事をしてまいりましょう。ではまた来月!
本田哲也(ほんだ・てつや)ブルーカレント・ジャパン代表取締役社長/米フライシュマン・ヒラード上級副社長兼シニアパートナー/戦略PRプランナー。主な著書に『最新 戦略PR 入門編/実践編』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)、共著に『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。 |