800近くある国公私立大学が受験生や資金を求めて競争する教育現場。スポーツ選手を多く輩出する東洋大学で広報を務める榊原康貴氏が、現場の課題や危機管理などの広報のポイントを解説します。
「大学広報ゼミナール」の連載を始めて、色々なテーマで講演の依頼をいただくようになりました。中でも危機管理対応やクライシス・コミュニケーションについてのご要望を多くいただいています。大学でも社会からの信頼を得るためには、危機管理についての重要性が増しているという状況なのです。そこで今回はインターネットを介した不祥事について書きたいと思います。
新聞記事から読み解く傾向
例えば新聞記事のデータベースで過去の大学生の不祥事について調べることが多いのですが、1970年代初期ごろは大学生の不祥事といえば学生運動での逮捕についてが多く、時を経て、2000年ごろになると、不祥事は主に運動部や薬物使用などが目立つようになりました。そして現在の傾向としては、逮捕などに至らないまでも、「拡散」「炎上」をともなうネットを舞台とした不祥事が多く見られるようになってきました。こうした不祥事は新聞記事というよりもSNSなどで情報が拡散し、まとめサイトやニュースサイトでの露出が多くなってきている傾向です。この状況は大学生特有の事象というよりも、世間一般との特徴に差異がない状況になってきているようにも感じます。
「悪ふざけ」が「不祥事」に
さて、昔は「いたずら」であったことは、今では「不祥事」として取り扱われることが多くなってきました。例えば、今の大学生が生まれたころのインターネットの人口当たりの普及率は10%前後でした。そして、2015年末の普及率は83.0%まで上昇しています(総務省「平成28年度 情報通信白書」より)。まさに、彼らの成長に合わせてインターネットやIoTが発達してきたことになります。そういった意味では …