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なぜ地方創生に「広報力」が必要なのか?

企業版ふるさと納税がスタート 第一回は102事業を認定

内閣府

2008年度の導入以来、一般に広く定着した「ふるさと納税」。さらに今年、企業が寄附を行う「企業版ふるさと納税」がスタートし、8月には第一回の対象事業として102事業323億円が認定された。

インフォテリアと秋田県仙北市は10月に都内で会見を開催。企業からの寄附額が事業費に達していない状況を説明し、他企業からの追加協賛も募った。

地方創生に企業が参画する-。そんな流れを後押しする制度がスタートした。今年度から始まった「企業版ふるさと納税(地方創生応援税制)」は、企業が応援したい自治体の事業に対し寄附をすると、法人関係税の一部控除を受けられるという制度。企業側には節税のほか、地方創生に積極的な企業だとPRできるというメリットがある。

第一回は102事業を認定

「地方創生の取り組みがスタートして今年で3年目となりますが、やはり国と自治体だけで地方創生を実現することは難しい。産官学金労言(*1 現在の政府の地方創生戦略では、産官学に加え、金融(金)、労働者(労)、マスコミ(言)の連携が必要であるとしている。)が連携して挑むべきだと始まったのがこの制度です」と、内閣府地方創生推進事務局の菊池善信参事官は解説する。

自治体はあらかじめ1社以上からの寄附の内諾を取り付けた上で、寄附を活用して実施する「地域再生計画」を策定し、内閣府に申請。内閣府から認定が下りれば、他の企業からも寄附を募りやすくなる。企業側は、本社所在地や東京都など一部対象外の自治体を除き、全国どこへでも寄附が可能で、下限額も10万円とハードルが低く設定されている。

企業側のメリットは大きく2つ。通常、企業が自治体に寄附をする場合、全額を損金算入することで約3割の減税効果があるが、企業版ふるさと納税ではさらに3割が法人関係税から控除される。また地方創生に積極的な企業であるとアピールでき、社会的なイメージ向上につなげることもできる。

今年8月には第一回の対象事業として102事業323億円が認定された。ニトリホールディングスによる北海道夕張市の「コンパクトシティの推進加速化と地域資源エネルギー調査」、サントリープロダクツによる鳥取県江府町の「遊休農地を活かした6次産業化推進事業」などがあるが、この中には、早くも今回の決定をPRに結びつけようという企業も出ている。例えば、IT企業のインフォテリア(東京・品川)では、秋田県仙北市の「桜に彩られたまちづくり計画」へ100万円の寄附を決定。10月12日には、平野洋一郎社長(写真右)と門脇光浩仙北市長出席のもと都内で記者会見を実施するなど、積極的に活動を発信している。

図1 事業分野別の認定状況
第一回で認定された対象事業は「しごと創生」の分野が73%を占めた。

「当たり前の企業活動」目指す

一方で、寄附を予定している企業の中からは「企業名を明らかにしたくない」という声も。実際、今回内閣府が公表した計画の中には、具体的な企業名を伏せているケースが7割にも上る。

こうした現状について、菊池氏は「寄附をしていない他の自治体に配慮して公表を控えているケースもあるのでは。今後は政府広報としても制度のPRに力を入れていく方針で、この税制度が『当たり前の企業活動』として認知されるようになれば、企業側の姿勢も変わってくるのでは」と期待する。

また、いかに企業に自治体の魅力や取り組む事業についてアピールできるかという、自治体側の発信力も求められる。菊池氏は「都道府県や政令指定都市など規模が大きい自治体の中には、寄附を募るための『IR活動』に取り組むケースもあります。これまで産業界へアピールをしてこなかった自治体も、ぜひ積極的にPRをしてほしいですね」と呼びかけている。

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