年に1度の「自治体の通信簿」発表 2016年は石川県・金沢市が上昇
10月19日、ブランド総合研究所による「地域ブランド調査」2016年版の結果が公表された。全国1000の市町村について77項目を調べ、中でも「魅力度ランキング」は毎年注目を集めている。「自治体の通信簿」とも呼ばれる本調査をもとに、地域ブランディングのヒントを探る。
なぜ地方創生に「広報力」が必要なのか?
2015年調査の「魅力度ランキング」で下位だった3県。今回、この誌面企画を通じて2016年の順位を初めて知ることに。調査結果を踏まえ、各地域の課題と打開策を考える。
*2015年の順位は70代の回答者を含め再集計した結果をもとに表記
(左から)佐賀県 政策部広報広聴課 課長 光武 香織氏、
ブランド総合研究所 代表取締役社長 田中 章雄氏、
茨城県 広報監 取出 新吾氏、
群馬県 広報課 ぐんまイメージアップ推進室長 新井 徹氏
田中:茨城県は47位で、4年連続最下位でした。ただ、魅力度のスコアは上昇していて、上昇率では全国1位です。加えて認知度が昨年の38位から24位まで上昇しました。群馬県は45位で、今回は栃木県が46位にランクを落としています。
取出:2016年は北関東勢が、ワースト3県ですか……(苦笑)。
新井:栃木県がなぜランクを下げたのか、気になりますね。
田中:一方、今回は佐賀県が前回の45位から38位に大きくランクアップ。上昇した要因は「情報接触度」が最下位から38位になったこと。大ヒットしたアニメ『おそ松さん』とのコラボ企画が調査時期と重なったこともあり評価が高かったと思います。
光武:ありがとうございます!
田中:急に勝ち組オーラが……(笑)。
取出:『おそ松さん』とのコラボは、アニメキャラクターがモチーフだし、若年層向けの企画ですか?
田中:若い子も興味を持っているけど、40~50代の『おそ松くん』世代のファンにもアプローチできているのでは。
光武:女性ファンも多いです。それぞれ「推し松」がいますからね、「誰が好き?」と盛り上がっています。佐賀県では2015年から「サガプライズ!」という名称で、全国の企業やブランドとのコラボレーションによる情報発信プロジェクトを進めていて、その一環となります。
よしもとクリエイティブ・エージェンシーと組んだイメージアップキャンぺーンは、今年で4年目。2016年度テーマは11月に発表予定(写真は2015年度)。
近畿圏に向けた発信が全体の底上げにつながりました。よしもとと組んだPRや、積極的な広報活動が効いているのだと思います。次なる戦略は明確で、北関東への評価が低くなりがちな関東圏全体に響く強い武器を持つこと。特に市町村別の調査で「IT先端技術の魅力」で1位の、つくば市はまだまだポテンシャルがある。動画サイト「いばキラTV」で20代の女性にもリーチしつつあるということですから、ますます若者にアピールしてほしいですね。
取出:それでは私から。そもそもは「地域ブランド調査」と銘打っていながら、なぜ「魅力度」に焦点を絞ってランキングを発表しているのですか?
田中:調査項目は全部で103あり、外部評価が77項目、内部評価が26項目です。各項目の関連性から数式をつくって独自ランキングを出す方法も考えましたが、経年による変化を比較すると考えると数式が時代とマッチしなくなる可能性がある。そこで、地域ブランドの代表的な指標として「魅力度」という項目のランキング結果を発表しています。
取出:何に魅力を感じるかは人それぞれですが、「いつか行ってみたい」という憧れを喚起しやすい地域は強いと思います。我々のように北関東地方は東京から距離が近すぎるだけに、魅力に気づいてもらいにくいのでは?
光武:今回の調査結果で九州の人からの佐賀の評価が低い状況と同じですよね。あえて行こうと思われないのか。
田中:いえ、その考え方は間違っていますね。例えば東北地方の「観光意欲度」は、他の地域からよりも、東北に住んでいる人が高い傾向にあります。
取出:ということは、地元への愛着の強さが重要なのでしょうか。愛着があっても、胸を張って外に発信できるかどうかは別の話かもしれませんが。
田中:「どうせウチの県なんて」と卑下する人ほど、他者からの評価が低いと怒りますからね。ただ、堂々と地域の魅力を発信していないだけで …