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実践!プレスリリース道場

ライオンの記事化喚起型リリース 「調査+マイスター」の力で既存商品がニュースに

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出の企業・商品のリリースについて、配信元企業に取材し、その広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウをPRコンサルタント・井上岳久氏が分析・解説します。

どの企業にもその分野の『専門家』がいるものですが、その貴重な宝をPRに結び付けられていない企業がほとんどです。そんな中、トイレタリーメーカーのライオンは「お洗濯マイスター」や「オーラルケアマイスター」など、『暮らしのマイスター』というポジションをつくって上手に広報活動に役立てており、ぜひ見習いたい事例です。

生活情報を発信する研究所

今回取り上げるのは、2015年11月に配信した「ソフランアロマリッチ」という柔軟剤に関するリリース。既発の商品を「クリスマスと香りの意識に関する調査リリース」としてまとめることでメディアに再度アプローチしています。

私を含め、洗濯に疎い男性陣には知らない人も多いと思いますが、現在、柔軟剤には洗濯物を柔らかく仕上げるとともに、『良い香りを付ける』という機能も重視されています。2000年代前半、香りが強めの海外の柔軟剤が雑貨屋などに置かれるようになり、それを気に入った層からの需要が生まれました。

そこでライオンでは、2005年に「香りとデオドラントのソフラン」という商品を発売。競合商品も次々と登場し、店頭に様々なパッケージの柔軟剤が並ぶ『香り競争』の様相を呈していきます。日本人の体臭に対する意識が敏感になる中、香水とは異なった清潔感のある香り付けができるのが人気の理由でした。それまで柔軟剤を使っていなかった層も取り込み、市場規模は2010年の600億円から2015年の850億円にまで拡大しています(ライオン調べ)。ただし強い香りを敬遠する層もいて、今では香りが控えめな「香り防臭タイプ」と香りを長く残す「高残香タイプ」に市場は二分しています。

今回リリースしたアロマリッチは高残香タイプで、ローズの香りがする商品。ライオンは「クリスマスに身につけたいのはローズの香りだ」という調査結果とともにリリースしています。皆さんもご存知の通り、新発売の時期を過ぎてしまった商品の記事化は難しく、それを分かっているのでリリースも送りづらいものです。しかしライオンでは、発売後も商品を「育てる」という発想で、切り口を工夫して既発商品のリリースを積極的につくっています。その際によく使うのが「調査+マイスター」リリースなのです。

また、同社が進んでいるのはそのために「快適生活研究所」という研究所まで設立していることです。冒頭で触れた暮らしのマイスターが中心となって暮らしに役立つ情報の開発や調査、実証研究などを行い、広報発信をしているのです。

快適生活研究所と暮らしのマイスターは2011年に新設されました。ここまで徹底している企業は他には聞いたことがありません。今回、取材対応してくれた …

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