なぜ採用活動において、広報の視点が求められるようになったのか。多くの企業の採用・インナー広報支援を行ってきたパラドックスでは、「志」と「経営の品質」こそ企業の差別化要素になると指摘している。
志は「パクる」ことができない!
─なぜ今、企業の採用活動とブランディングは一体化していくべきだと考えますか。
採用マーケットは熾烈を極めており、いまや大企業も中小企業も完全に横並び状態で「内定取り合戦」をしている状態です。優秀な学生には企業のアプローチが集中していますし、特に中小企業ほど、優秀な人材の採用によって会社の成長度合いが変わるほど大きな影響を受けます。それを理解している経営者は人材育成にも熱心で、採用に力を入れています。
優秀な学生に入社してもらうには、自社のブランドや他社との違いを早期から学生に認知してもらうことが重要ですよね。そう考えると採用活動とは企業ブランドをつくる活動そのものであり、非常に時間がかかります。
─多くの企業が人材獲得を課題とするなかで、企業の価値を差別化する要素とは何でしょうか。
例えば、ある企業が革新的なビジネスモデルを生み出したとします。ところが今の世の中、後発企業がその手法だけを模倣するのは簡単なこと。
例えば今回の特集にも登場している飲食店「塚田農場」を運営するエー・ピーカンパニーもまさに同様の状況があり、生産者のにおいを感じさせる後発店が次々と出てきています。それでも、店舗の人気も企業の勢いも衰えを知りません。その理由は、サービスに接したお客さまの評価に差が出ているから。その差を生み出している要素は何かといえば、なぜその事業に取り組むのかという企業が持つ「志」、その「浸透」です。
図1のように、コンセプトや商品・サービス、デザインなど目に見える部分はいくらでも真似できます。しかしその企業が時間をかけて築き上げてきた「志」は即席で「パクる」ことができません。どの企業も商品やサービスで差別化しようとしますが、「志」、つまり会社を立ち上げた理由は各社それぞれ異なるはずです。つまり創業の志は最初から差別化されているのです。
魅力的な企業は社会的に意義のある志を持っていますよね。その志を全社員に理解し行動してもらうことも非常に重要で …